【ケース別の対応】カウンセリングに通っているのに症状が改善しない場合  

「いちりづか」に相談のあるケースのほとんどは、こちらへの相談の前に地域の発達相談や教育相談、病院などにかかっています。

中には、長期間カウンセリングに通っていても緘黙症状が改善していない、というケースもあります。

 

 

身近な専門機関での対応が上手くいっていないケース

 

専門機関での対応が上手くいっていない例

・自治体の教育センターでプレイセラピーを受けている。月に2回のペースで3年間通っているが、いまだにそこの担当の先生にも声が出せていない。

・地域の病院のカウンセリングに通っている。カウンセラーとは話せるようになったが、学校では相変わらず話せないまま。

・「場面緘黙の子にも対応できる」という放課後デイを利用している。放課後デイでは先生と話せるようになったが、学校での改善にはつながっていない。

・箱庭療法に通っており、「よくなっていますよ」とは言われるが学校での緘黙症状は改善しない。

・大学の相談室で大学院生によるカウンセリングを受けている。別室でのカウンセリングのためどのような内容か分からない。

・話せないだけでなく体の緊張も強いためOT(作業療法)を受けることになった。OTには楽しく通っているが、緘黙症状についてはOTの専門外ということで助言や対応が得られない。

 

 

 

こういったケースに共通するのは、「学校(または園や職場、以下同じ)での緘黙症状の改善」を目指していないことです。

 

場面緘黙の症状はほとんどの場合、学校や職場などで生じます。ですので緘黙症状の改善は「学校で話せるようになること」を目指して行う必要があります。 

そのためには学校との連携が不可欠です。専門機関が関わる場合であっても、学校で話せるようになるための計画を考えて実践していかなければなりません。

 

 

学校と連携した緘黙症状の改善をどのように実践するか

 

では、学校との連携を具体的にどのように行っていったらよいでしょうか。上記の例を参考に考えてみましょう。

なお、下記の内容は保護者を主な読者として想定しています。保護者が「専門機関に学校との連携をどう依頼するか」という視点で書いてあります。

 

【ケース1】自治体の教育センターでプレイセラピーを受けている。月に2回のペースで3年間通っているが、いまだにそこの担当の先生にも声が出せていない。

このケースで上手くいっていないのは、「そこの担当の先生にも声が出せていない」という部分です。

たしかにカウンセラーと話せるようになれば、比較的簡単にカウンセリングを進められるようになります。ですが、「カウンセラーと話せるようになる」ことはあくまでカウンセリングの「手段」であって、これ自体がカウンセリングの「ゴール」ではありません。

その子は「カウンセラーと話せるようになる」ためではなく、「学校で話せるようになる」ためや「友だちと話せるようになる」ためにカウンセリングに通っているはずです。

 

ですのでこのケースでは、担当者と話せるようになることに時間をかけるのではなく、「学校での対応」や「学校で話せるようになるための練習方法」などの検討をしていくべきでしょう。場合によってはカウンセリングに本人を連れて行かず、保護者と担当者だけでこの点について相談してみるのもよいかもしれません。

 

何が問題になっているか、解決すべき問題は何か、原点に立ち返って考えてみてください。

 

【ケース2】地域の病院のカウンセリングに通っている。カウンセラーとは話せるようになったが、学校では相変わらず話せないまま。

【ケース3】場面緘黙の子も通える放課後デイを利用している。放課後デイでは先生と話せるようになったが、学校での改善にはつながっていない。

すでにカウンセラーや放課後デイの先生と話せるようになっているので、本人と色々相談していくことができそうです。カウンセリングで話せるということは、「条件が整えば話すことができる」ことを意味していますので、学校での緘黙症状改善についても期待がもてます。

ここから「学校で話せるようになる」ための具体的な計画を本人と一緒に立てて、学校での緘黙症状の改善につなげていきましょう

 

こういったケースでよくハードルになるのが、専門機関と学校との連携です。専門機関は学校での様子が分からず、学校も専門機関で何をやっているのかが分からない、という状態になってしまうことがよくあります。

なぜ連携が進みにくいかというと、「守秘義務」の問題や、出張・連携のための仕組み(ルールや予算)がないこと、などがありますが、一番の要因は「何となく連携が難しそう」とお互いに思っていることではないかと私は考えています。ですので、とりあえずできそうなことから連携を進めてみることをお勧めします。

 

 

専門機関と学校との実際の連携方法は色々あります。勤務時間の問題などもありますので、実態にあった無理のない方法を相談してみてください。

・保護者から学校の様子を詳細に説明し、解決すべき問題を絞って検討する

・専門機関から学校に報告書や手紙を書いてもらい、学校に渡す

・カウンセリングに担任など学校関係者に同席してもらう

 ・専門機関側の担当者に出張して支援会議に参加してもらう

・オンラインで専門機関と学校関係者との面談の機会を設定する

 

 

 

【ケース4】箱庭療法に通っており、「よくなっていますよ」とは言われるが学校での緘黙症状は改善しない。

【ケース5】大学の相談室で大学院生によるカウンセリングを受けている。別室でのカウンセリングのためどのような内容か分からない。

【ケース6】話せないだけでなく体の緊張も強いためOT(作業療法)を受けることになった。OTには楽しく通っているが、緘黙症状についてはOTの専門外ということで助言や対応が得られない。

こういったケースでまず確認してほしいのは、そもそも「(学校での)緘黙症状の改善を目指しているのか」ということです。

ですので担当者に直接、「緘黙症状の改善に向けた具体的な計画と見通し」を聞いてみるのがよいでしょう

 

緘黙症状の改善に向けた具体的な計画があり、今の取り組みがその中に位置付いているのであれば、その方法で対応を進めていけばよいでしょう。(3つ目のケースの場合は、緘黙症状以外の問題が主訴でありまずはそれにアプローチしている、ということもあります)

もし納得できる計画や方針の説明がなければ、それを続けていても緘黙症状は改善しませんそういう場合には、他の専門機関に相談してみることをお勧めします。

 

 

 

 

「専門機関で話せるようなること」は目指さなくてよいのか

 

ここまで、学校での緘黙症状の改善が重要であることを指摘してきました。

では「専門機関で話せるようになること」は目指さなくてよいのでしょうか。私は、それは必要ないと考えています。

なぜなら、学校で話せなければとても困りますが、専門機関で話せなくてもあまり困らないからです。

 

「話せなければカウンセリングができない」と考える人もいると思います。

ですが、カウンセリングだけなら話せなくても行うことができます。筆談でも指さしでも頷きでも、何らかのコミュニケーションさえできればカウンセリングはできます。緘黙症状があってもカウンセリングはできます。

 

私はこれまで何百人もの場面緘黙の方の相談を受けてきました。その中で初回から私と「声で」話せた方は全体の1割もいません。それでも何らかの方法でコミュニケーションがとれればカウンセリングはできます。話せなくても、初回から緘黙症状改善の方法を一緒に考え、実践することができています。

最終的に緘黙症状が改善して相談終了となっても、私とは話せないままという方もいます。それでも、私と話すことが目標ではないので、全く問題ないのです。

 

 

他の専門機関で対応できないケースでも対応できます

 

「いちりづか」に相談のあるケースのほとんどは、すでに他の専門機関にかかっている方です。

色々な専門家が関わってきたけど上手くいかない、というケースも少なくありません。そういう場合でも、詳しくお話を伺っていけば、必ず解決の糸口が見つかります。

 

「いちりづか」は「場面緘黙専門」の相談室ですので、他の専門機関で対応できないケースでも対応することができます。 

身近な専門機関で上手くいっていなかったり、身近にあまり専門機関がなく困っているという場合は、ご相談ください。