緘黙症状を改善させる方法           

 

重要な前提:場面緘黙の症状は改善する。しかし・・・ 

 

緘黙症状の改善とは、「話せるようになること」です。

場面緘黙は「治らない病気」ではありません。

 

世の中には「自分も昔、場面緘黙だった」という人がたくさんいます。正確には分かりませんが小学生の有病率が500人に1人くらいという報告もあるので、500人に1人くらいは場面緘黙の経験がある人なのかもしれません。

これは、「場面緘黙は治る」ということを意味しています。

 

いつどのように治ったかは人によって異なります。

話しやすい友だちがいたり、いい先生に巡り会ったりしたことがきっかけという方もいるでしょう。本人の涙ぐましい努力で克服した方もいると思います。改善までの道のりは人それぞれです。

 

ここで、知っておいてほしいことが2つあります。

1つ目は、緘黙症状の改善につながるような「話しやすいチャンス」は待っていてもなかなか巡ってこないということです。例えば学校で先生と2人だけで話すとか、友だちが家に遊びにくるとか、そういう機会は意図的に作っていかないとなかなか訪れません。

2つ目は、いつまで待っても話しやすい機会が巡ってこなければ、緘黙症状が改善しないまま大人になってしまうこともある、ということです。

ですので、ただ待っているだけではなく、緘黙症状改善のための積極的なアプローチを行うことが大切なのです。

 

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話す練習の基本は、「段階的なエクスポージャー」

 

場面緘黙の治療でもっとも効果があるのは、「段階的なエクスポージャー」という手法※です。

「エクスポージャー」は、不安などの原因になる刺激に段階的に触れることで少しずつ慣れていくという方法です。不安症の治療では最も効果の高い方法の一つです。

はじめから難しい練習に挑戦するのではなく、まずは話しやすい条件での練習から少しずつ段階的に難しくしていくことが効果的です。

 

【架空の例:学校で全く声が出せない小学生Aさんの場合】

Aさんが「学校でみんなの前で話せるようになること」を目指す場合を考えてみましょう。

最初から「朝の会で、クラス全員の前でスピーチをする」に挑戦するのは、Aさんにとっては難しすぎます。

そこで、Aさんにとって安心してできる(または、ちょっと頑張ったらできる)難易度まで下げ、「話しやすい条件」を作り出してみましょう。

 

難易度を下げるには、「相手を変える」「人数を減らす」「場所を変える」「時間を変える」「話す内容を変える」「話し方を変える」といった方法がよく使われます。

例えば人数と時間を変えて、「放課後に友だち1人とスピーチの練習をする」「家でスピーチの原稿を読んでお母さんに聞いてもらう」という方法なら、Aさんはできるかもしれません。このようにして「話しやすい条件」を見つけて、そこから練習を始めていきます。

 

スモールステップ.png 

 

※段階的なエクスポージャー:本によっては「行動的技法」や「行動療法」、「刺激フェーディング方」などの用語がでてきますが、専門家の方でなければだいたい同じものや近いものを指していると理解していただいて結構です。この練習をするための一つひとつのステップを「スモールステップ」と呼ぶこともあります。

 

 

「話しやすい条件」を作る方法:「人」「場所」「活動(すること)」を組み合わせる

 

「話しやすい条件」を作り出すときによく使われるのが、場面を「人」「場所」「活動(すること)」に分解して、組み合わせる方法です。

  

人と場所の組み合わせ.png

  

「人」と「場所」はイメージしやすいですね。

「活動(すること)」というのは、様々な「話す」「コミュニケーションをとる」ための活動です。「会話」「雑談」の他にも、「音読」「挨拶」「しりとり」などの声を出す活動があります。また「筆談」「メール」のような活動も組み合わせることができます。

このように、「人」「場所」「活動」を組み合わせれば、図のように色々な条件を作り出すことができます。

 

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実際の練習では、これよりももっと細かい要素まで考えて、「話しやすい条件」を作っていきます。

「話す練習」の色々な方法や工夫については、ブログにもたくさん書いていっていますので、よかったら参考にしてください。

 

 

一人ひとりに合った練習メニューを考えることが大切

 

では上で説明した「話しやすい条件」とは、いったいどのような条件でしょうか?

・「よく知っている人」と「知らない人」とでは、どちらが話しやすいでしょうか?

・「静かなところ」と「にぎやかなところ」では、どちらが話しやすいでしょうか?

・「書いてあるものを読む」のと「自分で考えて話す」のでは、どちらが話しやすいでしょうか?

 

正解は「人によって違う」。

「話しやすい条件」は人によって異なります。ですので、話す練習は一人ひとりにあったものを考えていかなければなりません。

 

 

考えた練習がうまくいかないときは?

 

この説明を読んでいる方の中には、すでにこういった方法を試してみたけど上手くいかない、という方もいると思います。

この方法で上手くいっていない場合、おそらく次のいずれかに問題があるはずです。

 

1.「本人の意思」練習や目標に対して本人自身が意欲を持てているか。

2.「綿密な計画」:適切な目標が設定されているか。「話しやすい条件」は整っているか。

3.「関係者の連携」学校の先生や友だちなどの協力が得られているか。

 

私はこの3つを「緘黙症状改善のための3要素【WPC】」と呼んでいます。

この3つの要素がしっかり満たされていれば、緘黙症状の改善は上手くいくはずです。

 

練習が上手くいかない場合は、この3要素が満たされているかを確認してみるとよいでしょう。

※「スモールステップ」の練習がうまくいかないときの対応は、こちらの記事にも書いておきました。

  

 

「何を目標にするか」から考えるのが成功の秘訣

 

私が上記の3つのうち最も重視しているのは、1つ目の「本人の意思」です。

どんなに上手くいきそうな練習の計画でも、本人自身がやりたくないことであれば、上手くはいきません

ですので「目標」がとても重要です。

 

話すことには必ず「相手」がいます。その相手は、本人にとって「話したい」と思える相手でしょうか。そうでなければ、練習のための意欲は湧きづらいでしょう。

反対に、少し難しいかなと思うような条件でも、本人が「この人と話せるようになりたい」「ここで声が出したい」と思っていれば、練習が進んでいくかもしれません。

ですので、具体的な練習の計画を立てるためにはまず、「何を目標にするか」が大事になるのです。

 

 

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「話せるようになること」だけが目標ではない

 

ここまでは「話せるようになること」について書いてきましたが、場面緘黙の症状のある人が困っているのは話せないことだけではありません。

話すこと以外にも様々な「できなくなってしまうこと」「苦手なこと」を伴うことが多いです。

 

どんなときに、どのようなことに困っているかは人によって異なります。話せないことよりも、学校に行けないことや友だちと遊べないことに辛い思いを抱いている子もいるでしょう。

目標を立てるときには、はじめから「話せるようになること」だけに限定しないことも大切です。

  

 

おわりに:「いちりづか」の役割は?

 

ここまでの内容をちゃんと理解していただければ、どなたでも適切な計画を立てて練習を進めていくことができると思います。

ぜひ、緘黙症状改善を目指して練習を進めていってください。

 

では、もしそれで緘黙症状を改善させることができるなら、「いちりづか」の役割はいったい何でしょうか。

 

それは緘黙症状改善のための、より効果的で、効率的な方法を、一人ひとりの状態に応じて考えることです。

筋トレは一人でもできますが、パーソナルトレーナーがいた方が効果的なトレーニングができます。

語学の学習もスポーツの練習も、プロの力を借りた方が効率よくステップアップすることができますね。

私はこれまで何百人も緘黙症状のある方と関わってきたので、これについては自信があります。

本人への説明や効果的な練習方法の提案、学校との具体的な連携方法の助言など、緘黙症状に向けた最短ルートでの進め方を考えることができます。

 

そして、緘黙症状の改善が筋トレや語学と違うこともぜひ知っておいてください。

それは、長引けば長引くだけ、本人が辛い思いをするということです。

小学生なら小学生のうちに、中学生なら中学生のうちに、なるべく早く緘黙症状を治してあげた方がよいでしょう。

 

できるだけ早く、負担が少なく楽な方法で症状を改善させてあげたい、という方はぜひご相談ください。

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