【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法

2024-04-03 09:00:00

お知らせ:ブログをお引っ越ししました

引っ越し先はこちらです。

 

 

「話せるようになる」ための500の方法

 

 

ブログを始めて2ヶ月ほどになりますが、記事がだんだん増えてきました。

もともと「いちりづか」のサイトはブログ用にできていないので、ブログの機能があまり充実していません。

そのため過去の記事が探しづらいなど、色々と見づらくなってきてしまいました。

そこで、ブログ記事だけ見やすいようにこちらにお引っ越しすることにしました。

 

2024-04-02 09:00:00

【4月にすること②】計画を立てるなら4月中旬~5月中旬がお勧め!

前回の記事で、4月は環境が変わるので新しい計画を立てましょうと書きました。

計画を立てる時期は4月中旬~5月中旬が最適だと私は考えています。

これは、日本の標準的な学校生活のスケジュールと密接に関わっています。

 

 

「話す練習」は学校生活のスケジュールを意識して計画する

 

私は、場面緘黙の症状はカウンセリングルームの中だけで練習しても治らないと考えています。

緘黙症状の改善とは「園や学校、職場など、その人が主に過ごす社会生活の環境で話せるようになること」です。

学齢期の子どもなら、「学校で話せるようになること」が大きな目標になります。

 

このため「いちりづか」で提案する話す練習は多くの場合、学校生活の中で練習することを計画します

そうすると必然的に、学校生活のスケジュールを考慮した計画を立てることになります。

 

「緘黙症状」も「話す練習」のための計画も、学校やクラスの環境によって大きく変わります。

担任やクラスは基本的に年度単位で変わるので、緘黙症状改善のための話す練習は「年度」単位で計画するのが基本です。

また「年度」よりも短い単位として「学期」も意識するのが有効です。

例えば担任の先生に協力してもらう練習なら、夏休みの期間はあまり練習できませんし、夏休みの前と後で症状自体も変わってくるからです。

(前期・後期の2期制をとっている学校でも、計画を立てる場合は夏休み・冬休み・春休みに区切られた3つの時期を意識するのがよいでしょう)

 

 

4月中旬~5月中旬に計画を立てるのが最適な理由

 

「担任の先生がどのくらい協力してくれるか?」や「クラスに仲のよい友だちはいるか?」によって、話す練習の計画は全然違ってきます。

担任の先生がどんな人か分からないうちは、「担任と話せるようなること」を目標にすべきかどうかも決められません。

こういったことがある程度分かってきて、本人も新しい環境での学校生活に慣れてきてからでないと、計画を詳細を考えることができないのです。

このため、学校が始まって最初の一週間が終わるくらいの時期である「4月中旬」頃が計画を立て始める時期として最適なのです。

 

一方、計画を立てるのが遅くなりすぎるのはお勧めできません。

遅くなれば遅くなるほど、練習に使える期間は短くなっていきます

ですので5月の連休明けまでには、しっかりした計画を立てておくことを心がけましょう。

 

5月中旬までにしっかりした計画を立てることができれば、1学期の途中で計画を見直すこともできます。

だいたい7月の下旬から夏休みと考えると、2ヶ月ちょっとの期間があります。

「5月中旬~6月中旬」が前半、「6月下旬~7月下旬」が後半というイメージで、5月に立てた計画を1ヶ月実践して、6月に見直して修正することができるのです。

こうすることで、話す練習の計画をより効果的なものにできます。

2024-04-01 09:00:00

【4月にすること①】新しい計画を立てる

環境が変わると、心身も変わる

 

以前の記事で場面緘黙は環境因子の影響を受けやすいと説明しました。

 

ヒトの生物学的特徴(身長や気質など)は3月31日と4月1日とでほとんど変わりませんが、「環境」の方は大きく変わります。

進学など学校が替わる場合でなくても、例えば小学1年生から2年生に上がるといった学年の変化だけでも、子どもにとってはとても大きな変化です。

こういった環境の変化は、子どもの心身にも大きな影響を与えます

 

ですので、環境が大きく変わる4月にしっかり「新しい計画」を考え直すことが大切です。

 

 

何が、どのように変わったか

 

「新しい計画」を立てるために、まずは「何が、どのように変わったか」を把握しなければなりません。

これは、「環境側の変化」と「本人側の変化」に分けて考えるのがよいでしょう。

 

「環境側の変化」とは、学校やクラス、学習内容や学校生活の様々な変化です。

学年が1つ上がるだけでも、担任やクラスメイト、教室、教科書や持ち物など、色々なものが変わります。

ですので計画を立てるのに先だって、まずはこういった新しい環境の詳細を理解することが必要です。

 

「本人側の変化」は環境側の変化によってもたらされます。

新しい学年で頑張りたいことや、できるようになりたいこともあるでしょう。

「新しい環境になったら、話せるかもしれない」と思っているかもしれません。

こういった本人の意思や考えを、4月になった時点で新たに確認しておくことが大切です。

 

 

「新しい計画」を考えるタイミング

 

新しい計画を立てるのは、なるべく早い方が望ましいです。

しかし、「何が、どのように変わったか」を把握するにはそれなりに時間がかかります。

学校生活が始まってみないと、新しい環境がどんなものかも分かりません。

 

こういったことが分かってくるのは、4月中旬くらいからでしょう。

この4月中旬から1ヶ月くらいが、新しい計画を立てるのに最適な時期だと言えます。

次回はこの「新しい計画を立てるタイミング」について、もう少し詳しく解説しましょう。

2024-03-27 16:00:00

【高校生、女性】約1年間のカウンセリングで顕著に症状が改善したケース

【対象】まきこさん(仮名)女性

高校2年生で相談開始

 

【概要】

約1年間、6回のカウンセリングで顕著に症状が改善した高校生の女性です。本人と相談しながら話す練習に取り組み、同級生の前でも声が出せるようになりました。

初回から本人とは筆談で聴き取りをすることができました。

面談は2ヶ月に1回程度の頻度で行いました。「話す練習」の宿題の達成状況を確認して、次のステップを一緒に考えるという方法で、話せる相手や場所を増やしていきました。

 

 

面談1回目:アセスメント、目標と練習メニューを考える

 

まきこさんは小学2年生の途中くらいから学校で話せなくなり、それ以降現在まで緘黙症状が続いているとのことでした。初回は母親から緘黙症状や生育歴等を詳細に聴き取り、まきこさんとも筆談でやりとりをしました。

まきこさんから「話せるようになりたい」という強い意志が確認できたので、「話す練習」に取り組むことにしました。私から練習方法の概要を説明し、「目標」を考えるところから始めました。

相談しながら考えた結果、目標を「担任のA先生と、学校で話せるようになりたい」に設定しました。またこの目標を達成するための練習の方法として、まずは「放課後に教室で、A先生に教科書を音読する」に取り組むことにしました。

 

 

面談2回目~5回目:話す内容や相手がステップアップ

 

「話す練習」は宿題形式で実施しました。毎回の面談で練習方法を相談し、その結果を記録用紙に書いてきてもらうという方法です。

毎回の話す練習(宿題の内容)は、次のようにステップアップしていきました。

1回目:「放課後に教室で、A先生に教科書を音読する」

2回目:放課後に教室で、A先生に教科書を音読する。できればしりとりもする」

3回目:「放課後に教室で、A先生からの簡単な質問に答える。できればテーマを決めて話す」

4回目:「放課後に教室で、B先生からの簡単な質問に答える」

5回目:「休み時間に教室で、A先生とテーマを決めて話す」

面談は概ね2ヶ月に1回の頻度で行いましたが、その間に毎回5~7回くらいの練習を行ってくることができました。

 

(3回目の面談時の記録:一部抜粋)

日付 場所 活動(状況の説明) 不安レベル
○月○日 A先生 教室(放課後) 教科書の音読(5行) 3.3
○月○日 教科書の音読(2段落) 3
○月○日 教科書の音読(4段落) 3
○月○日 教科書の音読(2段落)・しりとり 3.2

 

5回目の面談では、3学期に学習成果の発表のプレゼンテーションがあるので、それができるための方法を相談しました。録音よりも自分の声で発表したいとのことだったので、A先生に練習の機会を作ってもらって、しっかり練習してからみんなの前での発表に臨むことになりました。

 

 

面談6回目:クラスで発表ができた

 

プレゼンテーションは、とても緊張したけれど無事に行うことができたとのことでした。まきこさんが同級生の前で声を出すことができたのは、小学校低学年以来だそうです。

同級生には事前に担任のA先生から、まきこさんが声で発表することを説明してありました。そのためまきこさんが話してもみな特に驚いたり、過剰なリアクションをしたりすることもありませんでした。

また発表後に何人かの同級生がまきこさんに話しかけてくれて、ことばを交わすことができたそうです。

 

 

【解説】

比較的短期間で緘黙症状が改善したケースです。緘黙症状が続いていた期間は小学2年生から高校2年生まで約8年間でしたが、「話す練習」に取り組んでからは約1年間で症状が改善しました

他のケースでも同様ですが、まきこさんの話す練習が上手くいったのも【WPC】の3要素が揃っていたからだと言えます。

 

【W(本人の意思)】本人が「話せるようになりたい」と思っていた

【P(綿密な計画)】面談で本人とのやりとりができ、一緒に計画を考えることができた

【C(関係者の連携)】高校の先生の協力を得て、練習が継続して行えた

特にまきこさんの場合、本人自身の「話せるようになりたい」という気持ちが強かったことが、練習が短期間で進んでいった要因ではないかと考えています。

 

 

 【注意点】

事例の紹介にあたっては、本人及び家族の同意を得ています。

ただし個人に関わる情報ですので、転載は絶対にしないでください

また必要に応じて細部を改変していますので、事実と異なる場合もあります。

 

この事例の紹介はあくまで個別のケースに対して上手くいった方法です。

同様の方法を行っても、他のケースに対しては効果がない場合もあります。

練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。

 

2024-03-24 16:00:00

「10歳を過ぎると治りにくくなる」!? そんなことはないですよ。

保護者の方から、「10歳を過ぎると治りにくくなるそうですが・・・」という話を聞くことがよくあります。「年齢が高くなると治りにくくなる」と言われることもあるようです。

 

そんなことは全然ありません

年齢が高くなってからでも緘黙症状を改善させることはできます。

 

むしろ私は、年齢が高い方が治しやすいと思っています。

年齢が高い方が、本人とやりとりしやすくなり、話す練習の方法なども詳しく相談することができるようになります。また、中学校や高校に進学するタイミングで緘黙症状がきれいに改善するケースも少なくありません。

大事なのは「年齢が高いか」ではなく、本人が「話せるようになりたい」と思っているかです。

 

では、「年齢が高くなると治りにくくなる」説が出てくるのは、なぜでしょうか。

 

 

「年齢が高くなると治りにくくなる」ように感じてしまう理由

 

1.年齢が高くなるまで、適切な対応がなされなかっただけ

効果のない対応をしていても、症状が軽ければ勝手に治ってしまうことはあります

軽い症状の子なら「プレイセラピー」だけでも改善することはありますし、「様子を見ましょう」「自然に治るのを待つ」というやり方でも(=何もしなくても)、治ってしまことはあります

このように症状が軽くて自然に治ってしまうのは、ほとんどが低年齢のうちです。

 

一方で、こういった対応では上手くいかなかった子が、「低年齢のうちに治らなかった」ケースになっていきます。「様子を見ましょう」と言って何もしていないうちに高学年になってどう対応したらよいか分からなくなってしまう、というのが典型例です。

 つまり「年齢が高くなるから治りにくい」のではなく、「適切な治療がなされなかった」から治りにくいのだと捉えるのがよいでしょう。

 

2.効果のない対応を続けたことで、本人の治療への期待を低下させてしまった可能性

中には、効果のない対応を何年間も続けてしまうケースもあります。

効果がないセラピーに何年も通い続けていれば、「治療を受けても治らない」と思うようになってもおかしくありません。

こうなってしまうと、効果のる方法を提案しても納得してもらうのはかなり困難になります。

 

ですので年齢ではなく「効果のない対応を続けた」ことが原因で、よけい治りにくくさせてしまっているのかもしれません

  

3.テレビなどで紹介されるのは、たいてい「年齢が高く、症状が重い」方

テレビなどで、大きくなっても重い緘黙症状が残っている方が紹介されることがあります。これも「年齢が高くなると治りにくくなる」という見方を強めてしまう一因だと私は考えています。

ただテレビでは、症状の軽い子や、すぐに治ってしまう子が紹介されることはあまりないと思います。極端な例を採り上げているので、「よくあるケース」だとは捉えない方がよいでしょう。

またそういった症状の重いうケースでも、適切な対応をすれば症状を改善させることができると私は考えています。中学生や高校生になってから話せるようになる方はたくさんいますし、本人が「話せるようになりたい」と思っていれば症状が重くても治すことができます

 

4.一般的に「早期発見・早期介入」がよいとされているから

乳幼児期・児童期の発達支援では、一般的に「早期発見・早期介入」がよいとされています症状が長引けば、対応が難しくなったり、二次障害に発展したりすることもあります。

これは場面緘黙もまったく同じで、対応は早ければ早いに越したことはありません。

ただ「早期発見・早期介入」がよいというのはただの一般論ですので、とりたてて場面緘黙の症状だけが年齢とともに治しにくくなるということではありません。

 

 

何歳からでも、緘黙症状の改善はできる

 

小学校高学年になって緘黙症状が続いていても、「10歳を過ぎたから治りにくくなる」と悲観する必要はありません。

何歳からでも、適切な対応を開始すれば緘黙症状を改善させていくことができます。

 

そして、もし年齢が高くなっても緘黙症状が残っている場合は、「適切な対応がなされてこなかった」可能性があると考えてみてください。

(何もしてこなかったか、適切ではない対応をしてきたか、のどちらか)

その場合は、少しでも早く効果のある対応を始めることをお勧めします。

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