【ケース別の対応】「様子を見ましょう」と言われてしまったら
医療機関や発達支援センター、スクールカウンセラーなど「専門家」と呼ばれる人に相談にかかった際に、治療方針の説明や具体的な助言はなく、ただ「様子を見ましょう」と言われてしまうことがあります。
これは場面緘黙に限らず、様々な子どもの発達の問題で起こりうることです。
適切な「様子を見ましょう」もある
「様子を見ましょう」にも色々あります。
専門家として、適切な対応を選択するために必要な「様子を見ましょう」もあります。
正しく問題を把握して適切に対応するためには、様子を見ることは不可欠です。(むしろ様子を見ることもなしに治療方法を提案してきたら、その方が問題です)
短期的に状態が変化していたり、待っているだけでも改善が望めるような場合も、しばらく様子を見るのが最適なこともあります。
また下手に介入するよりも、今は子ども自身の育つ力を信じて見守りましょう、ということもあり得ます。
このような適切な「様子を見ましょう」の場合は、現在の時点での見立てや仮説、考えられる治療方法の選択肢、今後の見通しなどがしっかり説明されるはずです。そして「色々な対応があるけれど、現状では様子を見ることが最良の選択である」ということが説得力をもって語られ、「いつまで、何の様子を見るのか」「様子を見た後でどうするのか」といった具体的な対応が述べられるはずです。
こういった適切な「様子を見ましょう」であれば、来談者も十分に納得し、次回の相談までを有意義に過ごすことができるでしょう。
魔法のことば「様子を見ましょう」
しかし、そのような必要かつ適切な「様子を見ましょう」ばかりではありません。治療方針の説明や具体的な助言はなく、ただ「様子を見ましょう」と言われてしまうケースもあります。
そのような「様子を見ましょう」は、その「専門家」は適切な対応が分からないということを意味しています。
「様子を見ましょう」というのは「専門家」からすれば便利なことばです。具体的な対応が分からなかったり知識がなかったりしても、とりあえずそう言っておけば、何か深遠な考えがあって、とりあえず今は焦らずじっくり取り組んでいきましょうといった雰囲気を醸し出すことができるからです。
それに「様子を見ましょう」と言っておけば、それ自体も一つの対応になってはいるので、「何もしていないのではなく、様子を見ているんだ」という形にすることができます。来談者からすれば、それ以上何も聞けなくなってしまいます。
さらに悪い「様子を見ましょう」
もっと悪い「様子を見ましょう」もあります。
それは、あたかも改善しているように思わせてしまう「様子を見ましょう」です。
特に何も対応せずに2ヶ月に1回くらい来談させておいて、毎回「よくなっているからもうしばらく見守りましょう」という助言だけをされるケースもあります。
もっと適切な対応をすれば症状は改善するのに、これでは改善しないまま症状が長期化してしまいます。
「様子を見ましょう」が適切な助言なのかを見極めるポイント
では、「様子を見ましょう」が適切な助言なのか無責任な「魔法のことば」なのかは、どう見極めたらよいでしょうか。
それは、以下の3つ(すべて)に当てはまるかを考えればよいと思います。
1.現在の時点での見立てや仮説、考えられる治療方法の選択肢、今後の見通しなどがしっかり説明されているか
2.「いつまで、何の様子を見るのか」「様子を見た後でどうするのか」といった具体的な対応が述べられているか
3.それらの説明で十分に納得することができたか
これらのうち、どれか一つでも足りなければ、それは適切な「様子を見ましょう」ではない可能性があります。
「様子を見ましょう」と言われてしまったら
もし専門家に相談して「様子を見ましょう」と言われてしまい、それが上記の3つに当てはまらないものであった場合は、どうしたらよいでしょうか。
その場合は、すぐに他の専門家に相談することをお勧めします。
場面緘黙は「放っておいて自然に治る」と考えるのは、正しい対応ではありません。もちろん自然に治るケースもありますが、その場合でも放っておくよりは積極的な治療的介入をした方が早く改善します。
無責任な「様子を見ましょう」は改善を遅らせるだけであり、場合によっては症状を長期化させる原因にもなります。
「様子を見ましょう」と言われたら、できるだけ早く、次の専門家を探して相談することをお勧めします。