【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法

2024-03-05 09:00:00

【連載:場面緘黙と不登校】第9回 「いい休み方」について①「学校を休む」の2つの意味

前回の記事では学校に行けない状態でも緘黙症状が改善してきた中学生の子について紹介しました。

この子の緘黙症状が改善してきた背景の一つとして、「学校に行きづらいはるかさんを暖かく見守りながら、学校以外でできる活動を広げていった」ことがあると説明しました。

 

またその前の記事では「しっかり休む」ことが大切だということをお話ししました。

私は学校に行きづらい子への対応として、「いい休み方」をすることがとても大切だと考えています。

そこで今回は、「いい休み方」とは何かについて考えていきましょう。

 

 

学校を「休む」には2つの意味がある

 

学校を欠席することを「学校を休む」とも言いますが、よく考えてみるとこれには2つの意味があります。

 

1つ目は「休養して心身の元気を整えること」

「病気で休む」など、「休む」というときには一般的にはこのことを意味することが多いでしょう。

土日祝日が「休みの日」なのは、毎日行ったら消耗してしまうからです。

せっかく休むんだったら、しっかり休養して心と体の元気を蓄えたいですね。

 

もう1つは、「(本来行くべき)学校に行くのを一時的にやめること」

日本語には、普通ならしていることを「しない」という意味での「休む」ということばがあります。

すごろくでも「1回休み」と言いますし、音符にも「休符」がありますね。

定期配送のお取り寄せも「今月は1回お休みします」みたいに使います。

「学校を休む」も、1つ目の意味よりもむしろ、こちらの意味で使われることが多いのではないでしょうか。

 

さて、よく考えてみてください。

「学校を休む」というのをどちらの意味で使っていますか?

2つ目の意味で使っているとしたら、「休む」と言ってもただ「学校に行かない」だけになっていて、心と体の元気を蓄えることになっていない、そんな休み方になっているかもしれません

 

※大変細かい話ですが・・・

実は、「○○を休む」というように目的語(~を)がつく場合、文法的には2つ目の意味になります。つまり「学校を休む」と言ったら、文法的には「休養する」のではなく「学校に行かない」という意味になる訳です。ですので、1つ目の「休む」であることを意識したいときは、「今日は学校に行かないで休む」のように言った方が正確ということですね。

 

 

「よくない休み方」について

 

休むと決めたら「いい休み方」をすることが重要です。

「いい休み方」とは、「心と体の元気が溜まる休み方」です。

  

反対に、よくない休み方もあります。

それは「心と体の元気が消耗する休み方」です。

 

せっかく学校を休んでも、周りから学校に行くように促されたり、そういう暗黙の期待が強かったりすると、本人はいたたまれない気持ちになります。

本来は子どもは学校に行っている時間ですから、家の中でひっそりと息を潜めて過ごしていて、ちょっと外出するのにも気を遣うでしょう。 

「みんなは今学校で勉強しているのに自分は何もできていない」「今は9時30分だから2時間目が始まったところだ」「3時間目の図工だけはやりたかったな」「そろそろ給食の準備だ」・・・こんな気持ちで1日過ごしていないでしょうか。

それは「休む」のではなく「(本来行くべき)学校に行っていない」だけです。

これでは休んでも休んでも、心身が消耗するだけになってしまいます。

 

 

どうせ休むなら「いい休み方」を

 

「いい休み方」をするには、本人も家族も学校の先生も「今は休むぞ」としっかり決めて、あとは自由に楽しく過ごすことが大切です。

散歩とか買い物とかスポーツとかに行ってもいいし、もっと普段出来ないことをしたりしましょう。

家族は「学校を休んでる子を遊びに連れ出してもいいのか」と思うかもしれないですが、別に体調を崩して休んでいる訳ではないので、楽しく過ごせばいいんです。

 

そこで次回からは、「いい休み方」について考えていきたいと思います。

2024-03-03 16:00:00

【中学生、女性】不登校の状態でも緘黙症状が改善してきた子

 

【対象】はるかさん(仮名)女性

相談開始時は中学1年生

 

【概要】

小学校低学年から緘黙症状があり、高学年からは学校に行けなくなってしまった中学生の女の子です。イラストがとても上手で、雑誌やSNSに投稿したり、イベントで販売したりもしていました。当初から「友だちと話せるようになりたい」という気持ちがあったので、学校に通うことよりもまずは緘黙症状の改善を目指しました。友だちとのメールの交換から練習を始め、途中からは中学校の先生とも話す練習を行うことにしました。相談開始から半年程で練習の効果が出始め、学年の終わりには話せる相手が増えてきました

 

【練習の経過】

はるかさんとは2ヶ月に1回程度のペースでオンラインでの面談を継続し、話せる相手や場面を増やす練習について相談しました。はるかさんとの面談は、文字チャットか母親を通した聴き取りで行いました。

はるかさんとの相談の経過について、時系列で見ていきましょう。

 

面談1回目(4月):目標と練習メニューを考える

・母親から現在の状態を詳細に聴き取った後、はるかさんと文字チャットでやりとりをしました。「学校で友だちと話したい」という気持ちがあることが分かり、さらに詳しく聴いていくと「特定の友だち(やよいさん)と話せるようになりたい」と思っていることが分かりました。そこで「話す練習」の進め方について説明し、どんな練習ができそうかを相談しました。はじめから声で話すのは難しいようでしたが「メールのやり取り」ならできそうだということで、しばらくは「やよいさんとメールのやり取りをする」という練習をしてみることにしました。

・学校は、他の生徒がいたり注目されたりするのが怖く、今は日中は行けないとのことでした。週1回、放課後に行く取り組みをしていたので、このときに担任の先生と話す練習ができそうか考えてみることにしました。

 

面談2回目(6月):メール交換からビデオ通話でのチャットへ

・宿題にしたメールのやり取りは5回行うことができました。不安レベルが少しずつ下がってきたので、次のステップに進むかを相談しました。どんな方法が出来そうかを考えた結果、「ビデオ通話のチャットで話してみたい」ということだったので、これを次回までの練習メニューにしました。時間差のあるメールのやり取りから、リアルタイムでのチャットに前進です。

・担任の先生との練習については、会うことはできても声を出すことはできなかったようです。はるかさんと相談の結果、中学校の先生と話す練習はしばらく行わないことにしました。

・イラストをSNSに投稿し始めたところ、知らない人からいいねやメッセージをもらうようになり、自分でも返信するようになったとのことです。またフリーマーケットで自分のイラストのポストカードを販売する機会もあったそうです。

 

面談3回目(8月):練習が停滞、学校外では活動の幅が広がる

・今回ははるかさんは面談には不参加だったため、母親から最近の様子を聴き取りました。

・ビデオ通話のチャットは練習できているものの、かなり緊張が強い状態が続いており、練習が少し負担になっているかもしれないとのことでした。一方学校外では活動できることが増え、遠出をしたり、別の友だちの家に遊びに行ったりすることができたとのことでした。

・「練習が負担なようなら休むか、内容を考え直してもよいので、本人とよく相談してみて」「普段の生活の中でできていることがあるので、今の時点では話す練習ができなくても、そういったことが広がっていくことが大切」と母親にお話ししました。

 

面談4回目(11月):「先生と話せるようになりたい」

・はるかさんとは前々回から5ヶ月ぶりの面談でした。友だちのやよいさんとのビデオ通話はお互いの顔が見える状態だと緊張するとのことでしたが、絵しりとりのときに声を出せることが何回かあったそうです。これについては同じ練習を続けることにしました。

・今回はじめて、「中学校の先生と話せるようになりたい」という意思が示されました。「先生の前でお母さんと話すのができそう」とのことだったので、「週に1回、放課後学校に行った際に、職員玄関で担任の先生の前でお母さんと話す練習をする。話す内容は「今日あったこと」で、母親から「何の絵を描いたの?」のような質問ししてもらってそれに答える」という練習を行うことにしました。

 

面談5回目(翌年1月):症状が改善し始めた

・この頃から、少しずつ家庭以外で話せる場面が出てきました。やよいさんとのビデオ通話では「こんばんは。」と言えたことをきっかけに、フリートークもできるようになったそうです。なぜ話せるようになったのかをはるかさんに聞いてみましたが、「分からないです」とのことでした。

・学校でも、知らない先生に声をかけられて返事ができたというエピソードがありました。「中学校の先生(全員と)と話せるようになりたい」「中学校に行けるようになりたい」という気持ちがはっきりとあることが分かったので、担任の先生と直接話す練習の計画を立てました。「週に1回、放課後学校に行った際に、担任の先生としりとりを30回する」という練習を行うことにして、できそうなら「先生からの質問に答える」にステップアップしていくことも確認しました。

・学校外では、市の教育支援センター(教育委員会の設置する不登校の子のための教室)に1年ぶりに通うことができ、先生の前で母親と話すことができたとのことでした。また母親の知り合いの人と話せたなど、家以外で話せる場面がありました。

 

面談6回目(翌年3月):症状が大幅に改善

・やよいさんと2年ぶりくらいに直接会う機会があり、対面で話すことができたとのことです。現在はビデオ通話ではかなりおしゃべりをすることができるようになりました。

・担任の先生と話す練習(しりとり)は5回行いました。教育支援センターにも定期的に通い始め、そこの先生とは何度か会話をすることができました。中学校よりも教育支援センターの方が「不登校の子専門のところだから安心する」ので話しやすいとのことでした。

・大きなコンベンションセンターで開催された通信制高校の合同説明会に参加し、色々な学校の情報を収集したり、担当の先生と話したりできたそうです。はるかさんの中で中学卒業後から将来の夢である「イラストレーター」になるための道筋をしっかり思い描くことができ、「同い年の友だちと話せるようになりたい」「みんなについていける学力をつけたい」「イラストが専門的に学べる学校に行きたい」といった目標が明確になりました。

・中学2年生になるに向けての目標として、学校に通う日数を増やすよりも、「新しい学年の先生と話せるようになること」を目指すことにしました。4月になったら「新しい担任としりとり」から練習を始め、「他の教科の先生としりとり」にも挑戦してみることにしました。

 

【解説】

ほとんど学校には行けない状態でも、しっかりステップを踏んで練習を進めていくことで緘黙症状の改善につながっていきました。

はるかさんについては緘黙症状の改善をSMQ-Jという尺度で記録しましたのでご紹介します。SMQ-Jは「Ⅰ社会的場面」「Ⅱ学校場面(教師)」「Ⅲ家族関連場面」「Ⅳ学校場面(同級生)」の4つの場面について、どのくらいの頻度で話せるかを03で評価するもので、数字が大きいほどよく話せていることを示しています(各領域の最大値は3)。この図から、3領域で症状が改善していることが分かります。なお「Ⅳ学校場面(同級生)」が0なのは、緘黙症状だけでなく「学校に通えていない」ことが理由だと考えられます。

はるかさんSMQ-J.png

では、はるかさんの話す練習が上手くいっている理由を考えてみましょう。

こちらの記事で緘黙症状改善のための3要素【WPC】について述べましたが、はるかさんの場合はどうだったでしょうか。

W(本人の意思)】本人が「話せるようになりたい」と思っていた

P(綿密な計画)】面談で本人とのやりとりができ、一緒に計画を考えることができた

C(関係者の連携)】友だちや中学校の先生の協力を得て、練習が継続して行えた

 

はるかさんの場合は、WPCのすべての条件が揃っていたことが分かります。Pについては約2ヶ月に1回の頻度で面談をしていたので、その時々の状況に応じてかなり詳しい計画を立てることができました。

Cに関しては、家族の協力がしっかりとあったことも大きいです。学校に行きづらいはるかさんを暖かく見守りながら、学校以外でできる活動を広げていった点が症状の改善につながったのではと思います。

なお、はるかさんと私の面談は、現在の時点でも「文字チャット」か「母親を通した聴き取り」です。別の記事でも書きましたが、このように、カウンセラーと直接話せなくても緘黙症状の改善はできるということも、ぜひ知っておいてください。

 

はるかさんとの面談はこれで終了ではなく、ここからまだ症状が改善していくことが期待できます。また別の機会にご紹介できたらと考えています。

 

 【注意点】

事例の紹介にあたっては、本人及び家族の同意を得ています。

ただし個人に関わる情報ですので、転載は絶対にしないでください

また必要に応じて細部を改変していますので、事実と異なる場合もあります。

 

この事例の紹介はあくまで個別のケースに対して上手くいった方法です。

同様の方法を行っても、他のケースに対しては効果がない場合もあります。

練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。

2024-03-02 12:00:00

【3月にすること③】「しっかり休むこと」と「初対面の人と話せるようになること」

「3月にすること」の続きです。

「4月に向けて準備をしておくこと」として以下の4つを挙げました。

・新しい環境でどうなりたいかのイメージづくり

・不安を減らすための相談や見学、情報収集

・心と体の元気を蓄えること

・お店などで知らない人と話す練習

  

今回は後半の2つについて解説します。

 

 

心と体の元気を蓄えること

  

3月に限らず、しっかり休んで心と体の元気を蓄えるのは大事なことです。

元気が最大100だとしたら、いつも全力の100で走り続けることはできません。

適度に力を抜きながら、長く進み続けることが大切です。

 

ではなぜ3月に「心と体の元気を蓄えること」が大事かと言うと、3月にがんばっても効率がよくないからです。

前回も書いたように、3月から4月にかけては環境が大きく変わるため、3月にできるようになったことが4月に同じようにできるとは限りません。

むしろ「4月になってからがんばる」方が効率がよいわけです。

 

春休みがいつから始まるかは学校や学年によって大きく違いますが、ここでは小学校を想定して春分の日前後から春休みとして話を進めしょう。

3月1日から数えて、学校に行く日数はあと15回くらいです。

もし話す練習を週に1回行っているなら、練習できるのは多くてもあと3回。

 ただし何かとイレギュラーなイベントもある季節なので、最終週まで普段通りのことができるわけではないでしょう。

通級は早ければもう最終回になってしまいます。

つまり3月というのは、1ヶ月あっても練習できる回数は少ない月なのです。

焦って色々やるよりも、ここは先のことを考えて効率のよい進め方を考えましょう。

 

また、もし学校に行くのが大変な子の場合は、3月にお勧めなのは「早めに春休みモードに入ってしまう」ことです。

残りの15日間、力を振り絞ってわずかな回数学校に行って疲弊するくらいなら、「今年度はもう行かない」と決めてしまった方がよいかもしれません。

考えてみてください。

頑張って週に何回か学校に行くのを3月下旬まで続けるのと、この1ヶ月間をまるまる「休む期間」と決めて後は楽しく過ごすのと、どちらがプラスになるでしょうか。

もちろん正解は人によって違いますが、後者の方がプラスが大きいようなら「早めの春休み」もありだと思います。

 

 

お店などで知らない人と話す練習

 

これは全員にお勧めの方法ではなく、「4月から新しい環境で話せる状態でスタートしたい人」向けです。

先ほど、心と体の元気を蓄えるためにしっかり休むことが大事と書きましたが、この時期の練習が効果的なケースもあります。

それは「3月に練習しておくことが4月からのスタートにつながる」ことが明確な場合です。

 

こちらの記事で書きましたが、「中学生になったら話す」「高校生になったら話す」のように考えている子はとても多いです。

そしてこれは実際、とても上手くいく方法でもあります。

この最大のチャンスである環境の変化を「ギャンブルにしない」ためにも、しっかり準備して4月を迎えることが大切です。

 

そのためにも、初対面の人と話せる」ようになっておくための練習を今のうちからしておきましょう

対面の人と話せるようになるには、この記事で紹介した「筋トレ」がお勧めです。

 

お店で注文する練習なら、学校に行く日があと何日かは関係なく、1ヶ月まるまる練習できます。

「4月から新しい環境で話せる状態でスタートしたい人」は、今こそ話す練習を頑張りましょう。

 

 

 【注意点】

ここに書いてある方法は、効果のある場合もありますし、そうでない場合もあります。

書いてある方法を機械的に実践しても上手くいきません。

練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。 

2024-03-01 16:00:00

【3月にすること②】「どうなりたいかのイメージ」と「不安を減らすための情報収集」

前回の記事では、3月から4月にかけては環境が大きく変わるため、3月には「4月に向けて準備をしておくこと」が大切だと書きました。

そしてそのための準備として、以下の4つを挙げました。

・新しい環境でどうなりたいかのイメージづくり

・不安を減らすための相談や見学、情報収集

・心と体の元気を蓄えること

・お店などで知らない人と話す練習

  

今回はこのうちはじめの2つについて解説します。

 

 

新しい環境でどうなりたいかのイメージづくり

 

準備をするためには、まず「何に向かっての準備なのか」が分かっていないといけないですね。

このため、目標をしっかり立てることが大切です。

 

緘黙症状の改善といっても色々な段階があります。

担任の先生と話せるようになるのか、全員の前で音読などができるようになるのか、不特定多数の相手と話せるようになるのか。

また「毎日学校に行く」「教室に入る」など、緘黙症状以外についても同様です。

まずは新しい環境でスタートするときにどうなっていたいかのイメージを、しっかり持つようにしましょう。

 

当たり前のことですが、これは周りの大人ではなく本人が考えることです。

小中学校への進学や転校など学校が変わるタイミングでは特に、この点をよく本人と話し合っておきましょう

 

ここで1つ気をつけてほしいのは、目標の難易度と、上手くいかなかったときの対応です。

できれば目標は高く設定してほしいですが、高すぎる目標だと失敗してしまうこともあります。

よくある例は、学校に行けていない子が「新年度になったらクラスで過ごす」と決心をして最初の数日は頑張るけどやっぱり行けなくなってしまう、というものです。頑張ろうとした分、反動でさらに悪くなってしまうことも起こり得ます。

私としては、こういう目標はぜひ尊重したいですし、ちょっと難しそうでも本人がやると言っているなら応援したいと思います。

そういう時は、「高い目標なので上手くいかない可能性もあらかじめ想定されるから、そうなったらまた早めに一緒に考えよう」と失敗に対して先回りして対応を考えておくとよいでしょう。

例えば「新しいクラスで自己紹介を頑張る」だったら、それができたかどうかその日のうちにしっかり確認して、すぐに次の一手を考えればよいわけです。

 

 

不安を減らすための相談や見学、情報収集

 

新しい環境でのスタートは、「不安」も「期待」も大きくなります。

「期待」が勝てば新しいことに挑戦する原動力になりますが、「不安」の方が大きければ尻込みしてしまうでしょう。

「期待」というのは、1つ目に述べた「新しい環境でどうなりたいかのイメージづくり」と関係しています。

では「不安」の方はどうでしょうか。

 

緘黙症状の背景に「不安」の強さが関わっていることが多いと言われます。

環境が変わる時期というのは、この不安が大きくなりやすい時期です。

なぜなら不安というのは「分からないこと」から生じるものだからです。

 

どうなるか分からないから不安、何が起こるか分からないから不安になるのです。

「分からないから不安」なのですから、有効な対策は「なるべく沢山の情報を収集しておくこと」です。

 

そこで、事前に見学に行って建物の中や周りの様子を把握しておきましょう。

新しい学校に進学する場合は、玄関から教室までの経路、トイレや他の教室の様子などを知っておくのが有効です。

 

公共交通機関で通学するなら、あらかじめ何回か同じ経路で行ってみるとよいでしょう。

新しい地域での生活をスタートさせるなら、グーグルマップやストリートビューでその辺りを詳しく探索してみることをお勧めします。

 

場所だけでなく、学校の先生に会っておくのも有効です。

もし事前に担任が誰か教えてもらえるなら、顔合わせの機会をつくっておきましょう。

 

また新年度の詳しいスケジュールを教えてもらえば、見通しが持ちやすくなります。

自己紹介はいつどのようにするか、授業はいつから始まるか、日直の仕事はどんなことをするか、など細かいことまで確認しておくとよいでしょう。

 

このようにしっかり情報収集をして、「不安」よりも「期待」が大きくなるように準備していきましょう。

 

 

 【注意点】

ここに書いてある方法は、効果のある場合もありますし、そうでない場合もあります。

書いてある方法を機械的に実践しても上手くいきません。

練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。

2024-03-01 09:00:00

【3月にすること①】「4月に向けた準備」が大切

場面緘黙の症状は3月から4月で大きく変わることがある

 

場面緘黙の症状は、他の障害や疾患よりも環境因子の影響を受けやすいです。

「自閉スペクトラム症」や「吃音」「構音障害」などの言語やコミュニケーションの障害は、相手によって症状が変わることはあまりありません。

一方、場面緘黙の症状は、進学や進級などのある3月と4月では劇的に変化することもあります

 

なぜ場面緘黙が環境の影響を受けやすいかと言うと、場面緘黙は「話せる相手」と「話せない相手」が明確に異なるからです。

本人自身が全く変わらなくても、環境が変わるだけで症状が変わります。

3月まで徐々に改善しつつあった緘黙症状が、クラスや担任が替わることで振り出しに戻ってしまうこともあります。

反対に、環境が変わって周りが「話せる相手」ばかりになれば、緘黙症状はなくなります。

 

 

新しい相手は「話しやすい」か?「話しづらい」か?

 

場面緘黙の人にとって、「新しい相手」というのは話しやすいでしょうか?それとも話しづらいでしょうか?

これは人によって違います。

「知らない人の方が話しやすい」という人もいるし、「慣れている人の方が話しやすい」という人もいます

そして同じ人の中でも、この2つが両方とも存在することもあります。

・仲の良い友だちは話せるが、他の子とは話せない。みんなと違う中学校に行ったら話せるかもしれない。

・学校の先生とは話せないが、知らないお店の人には声が出せる。いつもいく美容院の人とは会話ができる。

 

単純に「新しい相手なら話しやすい」という訳でもありません。

ですので、進学や進級などで新しい環境になることが、話しやすくなる方に作用することもありますし、反対に話しづらくなる方に作用することもあります

 

こういった特性をよく理解した上で、新しい環境を迎えるためにどうしたらよいかを考えるのが、3月にしておくべき重要なテーマです。

従って、3月にするべきことは、「環境が大きく変わる4月に向けて準備をしておくこと」です。

残り少ない3月にどんな練習をするかを焦って考えるよりも、新しい環境でいいスタートができるようにしっかり準備することが大切です。

 

3月にすること:「4月に向けた準備」

【お勧め度】★★★★★

    

 

変化はよい方にも、悪い方にも起こる

  

3月から4月にかけて症状の変化が大きいと書きましたが、この変化はよい方にも悪い方にも起きます。

自分のことを知らない人と話せるようになるチャンスであるのはもちろんですが、新しい環境に対しては不安も大きくなるでしょう。

また先生やクラスメイト、あるいは職場の同僚などとの関係が0からスタートすることもあり、これまで築いてきたよい部分もリセットされてしまうかもしれません。

なるべくマイナス面の影響を減らしながら、プラスを大きくしていくという二正面作戦で挑むことになります。

 

 

「4月に向けた準備」とは何をすれば

  

では、環境が大きく変わる4月に向けた準備とは、何をすればよいでしょうか。

以下の4つにまとめてみました。

・新しい環境でどうなりたいかのイメージづくり

・不安を減らすための相談や見学、情報収集

・心と体の元気を蓄えること

・お店などで知らない人と話す練習

 

詳しくは次回以降の記事で見ていきましょう。

 

 

 【注意点】

ここに書いてある方法は、効果のある場合もありますし、そうでない場合もあります。

書いてある方法を機械的に実践しても上手くいきません。

練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ...