【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法
【WPC】緘黙症状改善のための3要素
これまで色々なところで場面緘黙への対応について書いたり話したりしてきました。
色々書いても、根幹にある考え方は変わらないので、私は基本的にいつも同じことを言っていることになります。
今回はこのブログのために、それを改めてまとめ直してみました。
これまでの臨床経験を通じて私が考えた緘黙症状改善のために必須な3要素、名づけて【WPC】です。
「緘黙症状改善のための3要素【WPC】」
【確信度】★★★★★以上
この3要素【WPC】がすべて揃えば、ほとんどの緘黙症状は改善させることができると考えています。
反対に言えば、緘黙症状の改善が上手くいかないとしたら、この3つの要素のいずれかが欠けているということでしょう。
上手くいっていないケースでは必ず、この3要素のどこれか1つ以上に問題があるはずです。
では3要素を詳しく見ていきましょう。
1.本人の意思(Will)
もし緘黙症状改善に必須の条件を1つだけ挙げるとしたら、それは何をおいても「本人の意思」です。
「話せるようになりたい」という思いが、緘黙症状改善のための最大の原動力になります。
緘黙症状改善の必須の条件であるということは、ここが緘黙症状改善のための最大の難関でもあるということです。
正直に言いうと、私がこれまで関わってきた数多くのケースの中には、上手くいかなかったものもあります。緘黙症状改善に至らずに、相談や関係が途切れてしまうというケースです。
そういったケースに共通するのは、「話せるようになりたい」という本人の意思を上手く引き出せなかったことでした。
本人の意思がなければ(=本人が話せるようになりたいと思っていなければ)、緘黙症状の改善はあり得ないと私は思っています。
ただし私は、本人が「話せようになりたい」と思っていないケースは、実際には稀だと考えています。
多くの場合、本人の意思がないのではなく、親や教師や臨床家がその意思を上手く引き出せていないのではないかと考えているのです。
これについては関連する内容をこちらにも書きました。
2.綿密な計画(Plan)
本人の意思と同じくらい重要なのが、「綿密な計画」です。
本人の「話せようになりたい」という意思があっても、しっかりした計画がなければ緘黙症状は改善しません。
本人が「話せようになりたい」と思っていて親や学校の協力もあって練習をしているのに改善していかない、というケースのほとんどはこれが原因でしょう。
「本人のやりたい練習ではない」、「目標と練習の内容があっていない」、「練習の難易度が適切でない(難しすぎる/優しすぎる)」、「練習内容が現実的でない(計画だけで実際には練習の機会が作れない)」などのパターンがあります。(関連する内容をこちらに書きました)
同じように、「カウンセリングに通っていても症状が改善しない」というのも、そこで考えられている計画そのものに問題があるケースは多いです。
同語反復のようでもありますが、「練習が上手くいかないのは、上手くいく練習の計画になっていないから」ということです。
では「綿密な計画」はどのようにすれば立てることができるでしょうか。
それにはかなり多岐にわたる説明が必要ですので、簡単に述べることができません。
この「いちりづか」のサイトの色々なところにも書いていますので、隅から隅まで読んでいただければ、かなり理解できるとは思います。
また拙著「臨床家のための場面緘黙改善プログラム」(学苑社、2021年)により体系的に書いておきましたので、詳しく学びたい方はご覧下さい。
ただこれについてはマニュアルというのはなく、最終的には一人一人ひとりにあった計画を考えていかなければならない性質のものです。本人や家族だけで難しいと思ったらためらわずに専門家の力を借りることをお勧めします。
3.関係者の連携(Cooperation)
必須の要素の3つ目が、関係者の連携です。
本人の意思があって、綿密な計画があっても、それが実行できるためには学校や職場などの関係者の連携と協力が不可欠です。
子どもの場面緘黙の場合、緘黙症状から生じる問題のほとんどは学校で起きていることです。
もちろん学校以外でも緘黙症状は生じますが、問題の質においても量においても、学校で困ることが圧倒的に多いです(習いごとなら困ったら行かなければ済みますが、学校はそうはいきません)。
ですので緘黙症状の改善は、学校で(大人の場合は職場など緘黙症状が起きているところで)行う必要があります。
学校での緘黙症状の改善(=学校で話せるようになること)を目指すとすれば、学校との連携は必須です。
誰と、いつ、どの時間に練習をするのか、担任の先生に何を協力してもらうのか、学校はどのように条件を整えればよいのか。
そういったことをしっかり相談して、実践していくことが求められます。
病院等の専門機関だけでは緘黙症状が改善しないケースがある理由も、ほとんどはこれだと思っています(関連する内容をこちらにも書きました)。
専門機関にかかっている場合も、必ず学校との連携について具体的に計画を立てるようにしましょう。
【注意点】
ここに書いてある方法は、効果のある場合もありますし、そうでない場合もあります。
書いてある方法を機械的に実践しても上手くいきません。
練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。