【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法
【「喉がしまる」だけじゃない】色々な話しづらさの理由と、それに応じた練習方法
「話す練習」の相談をするときに、年齢の高い子や大人の当事者の方だったら「話しづらい理由」から考えてみることがあります。
緘黙症状というのは「発話の最終段階」で声を出すという行為ができなくなっている状態です。
「緊張して喉がしまったようになる」という話はよく聞きますが、実は「話しづらい理由」はそれだけではありません。
声を出すための「どの段階で話しづらさがあるか」は人それぞれなのです。
「話しづらい理由をよく考える」
【お勧め度】★★★★★
どの段階で話しづらさがあるか
「話す」という行為は、様々な段階で成り立っています。
話題・話す内容を考える
↓
単語や言い回しの仕方を選ぶ・文を作る
↓
相手の様子を見て声を出すタイミングを計る
↓
筋肉を動かし音声を作る
↓
発話
こういった一連の流れのどこに問題があっても、最終段階である「発話」ができなくなってしまいます。
ですので「緘黙症状」という現象は共通していても、「話しづらい理由(=発話のどこの段階に問題があるのか)」は様々なのです。
「話しづらい理由」
上記の流れを「話しづらい理由」という視点から言い換えてみると下記のような状態が考えられます。
・何を話したらよいか分からない、話す内容や話題が思いつかない(内容の問題)
・適切な単語や表現が思いつかない(単語・語彙の問題)
・上手に文が作れない(文法の問題)
・その場に応じた適切な言い方が選べない(語用の問題)
・相手の考えていることや反応が分からない(「心の理論」の問題)
・相手の気持ちを考えすぎてしまう(対人的繊細さの問題)
・話しかけるタイミングが掴めない(コミュニケーションのタイミングの問題)
・緊張して体が動かない、喉がしまったようになってしまう(運動の問題)
・吃音症状(ブロックなど)が出てしまい思うように声が出せない(吃音症状の問題)
・上手に発音ができない(構音障害など)ために話すのを躊躇してしまう(発音の問題)
・自分の声が変だと感じて話すのを躊躇してしまう、声に自信がない(自己認識の問題)
(もちろんこれがすべてではありません)
これらのどれが当てはまるかを一人ひとり聞いていくと、人によってかなり違うことが分かります。
また1つに絞れる場合よりも、いくつか複数のものが当てはまることが多いようです。
「話しづらい理由」に応じた「話す練習」がある
そして重要な点ですが、これらの「話しづらい理由」のどれに当てはまるかによって、「話す練習」の仕方も変わってきます。
話す内容や話題が思いつかないなら「話題づくり」をしっかりすればいいですし、単語や文法など「言語」の問題なら「話しやすい内容」から練習をしていくのがお勧めです。
他者理解やソーシャルスキルを鍛えるのがよい場合もありますし、発音の練習や吃音の治療に取り組むケースもあります。
「話し方」関連の本や、アナウンサーが書いている「声の出し方」の本をお勧めすることもあります。
ですので「話しづらい理由」を考えるのは、とても大事なことなのです。
【解説】録音を使った練習の進め方(後編)
前回は「録音を使った練習」の解説の前編をお送りしました。
今回はその続きで、
・録音から「会話」につなげる方法
・録音を使った練習の注意点
について説明します。
「録音を使った練習」
【使いやすさ】★★★★★
色々な条件
「話す練習」は「人」「場所」「活動(すること)」の条件を組み合わせて考えていくのが基本ですが、録音を使った練習でも同じです。
録音の場合、「録音する方法」「聞かせる方法」の2つの状況で構成されているため、それぞれについて条件を考えていくことになります。
組み合わせの数が増えるので、他の話す練習よりもスモールステップが作りやすい方法だと言えます。
1)録音する内容
他の練習でも同じですが、何を録音するのか(=活動(すること))の条件は話しやすさを大きく左右します。
「音読(教科書や新聞のコラムなど)」や「なぞなぞを出す」「しりとり」「質問への返答(事前にもらった質問に答える)」などの一般的な内容の他に、録音独特の方法もあります。
日記風に今日のできごとを語ったり、ビデオレターっぽく少し長めに話すのは、他の対面での練習ではしづらいので録音向きの練習です。
歌や英語のスピーチなど、「声を出すこと」が重要な学習活動を録音によって行うというケースも多いです。
2)録音する方法
練習の最初は、夕方や夜に自宅で録音するのが一般的です。
そこからステップアップして、「場所」や「時間」を変えていくことができます。
慣れてきたら学校の相談室や支援学級の教室での録音に挑戦することもできますし、中間の段階として通学路や校庭、駐車場や車の中での録音もできます。
時間についても、前日の夜録音するのと当日の朝録音するのでは時間的な距離が異なります。
学校で録音できるようになれば、録音してから聞かせるまでの時間を短くしていくことができます。
3)聞かせる方法
ICレコーダーで録音して聞いてもらう場合でも色々な条件があります。
・誰が聞くのか(担任だけか、特定の友だちか、クラス全員か、など)
・その場で聞くか(本人はいるかいないか)、別の場所で聞くか
・すぐに聞くか、時間を決めて聞くか
・スピーカーから音声を出して聞くか、イヤホンで聞くか
・何回聞くか(聞いたらすぐに消去するのか、など)
・どうやって音声データを渡すのか(誰がいつどのように) など
また練習の方法によっては「聞かせない」ということもあり得ます。
つまり「録音するだけして、聞かせないで音声データを消去する」という方法です。
これは「練習を聞かれるのは嫌」というケースで、練習の一番初めの段階で使うことがあります。
録音から「会話」につなげる方法
録音から会話につなげるには、「時間と場所を近づけていく」という考え方が効果的です。
上記の「2)録音する方法」で書いたように、学校での録音に近づけていけるとよいでしょう。
また内容についても、初めは音読からスタートして、慣れてきたら「質問に答える」に挑戦するのがお勧めです。
【ステップの例】※途中の段階をかなり省略しています
・家で教科書の音読を録音して、翌日担任の先生に聞かせる練習からスタート
↓
・慣れてきたら学校での録音に挑戦:誰もいない時間・場所に(放課後に相談室などで)音読を録音→翌日担任に聞かせる
↓
・学校での音読ができるようになったら時間と場所を近づける:担任から質問してもらってそれへの答えを相談室で録音→すぐに先生に聞かせる
ここまでできれば、リアルタイムでの応答まであと一歩!
家での音読から担任との会話まで、どのくらい時間がかかるかはケースバイケースです。
途中、かなり細かいステップをつくっていって、2年くらいかかってようやく先生からの質問に答えられるようになったケースもあります。
録音を使った練習の注意点
録音を使った練習を検討する際の注意点は1つだけ。
「本人とよく相談すること」です。
本人がこの方法でいけると思えば絶大な効果を発揮しますが、本人が嫌がったらこの方法を採用するべきではありません。
では、もし親や教師がこの方法で練習をしていってほしいと思っているのに、本人が拒否した場合は、どうしたらよいでしょうか。
それは簡単で、他の方法を考えればいいだけです。
この方法にこだわる必要はありません。
「話せるようになる」ための方法なんて500通りもあるわけですから。
録音を使った話す練習はとても効果のある方法です。
本人とよく相談しながら、効果的に練習を進めていけるといいですね。
録音を使った練習の小技や工夫などはまだまだありますので、また別の機会にご紹介します。
【注意点】
ここに書いてある方法は、効果のある場合もありますし、そうでない場合もあります。
書いてある方法を機械的に実践しても上手くいきません。
練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。
【解説】録音を使った練習の進め方(前編)
こちらの記事で、録音で練習した事例を紹介しましたので、今回は「録音を使った練習」について解説します。
「録音を使った練習」
【使いやすさ】★★★★★
「録音」は話す練習でもっともよく使う方法の1つで、上手に行えばとても効果があります。
この記事では、
・録音を使った練習のメリット
・お勧めの道具
・録音から「会話」につなげる方法(後編で紹介します)
・録音を使った練習の注意点(後編で紹介します)
を紹介します。
録音を使った練習のメリット
録音を使った練習が他の練習方法より優れている点がいくつかあります。
◎自宅でできる
◎いつでもできる
◎一人でもできる
○途中のステップが設定しやすい
○コミュニケーションの練習につなげやすい
◎がついたはじめの3つは、他の練習方法にはない録音ならではの長所です。
録音の練習は自宅で好きな時間に行うことができる訳ですが、考えてみればこれは緘黙症状のある人の「話す練習」にとっては非常に大きなメリットになります。
場面緘黙の症状のある人のほとんどは、家では普通に話すことができます。その普通に話せる状態で練習ができるのが、録音を使った練習の強みです。
また録音自体は一人でもできるので、練習の回数も他の方法よりもたくさん設けることができます。
協力者があまり時間をとれない場合にも有効です。
従って、色々な練習方法の中で「行いやすさ」という点で最も優れているのが、録音を使った練習だと言っていいでしょう。
「途中のステップが設定しやすい」「コミュニケーションの練習につなげやすい」は、他の練習方法にも共通して言えることです。
「録音の練習でどうやって途中のステップを設定するの?」と思う方もいるかもしれませんが、それは後ほどご説明します。
お勧めの道具
では録音をするときのお勧めの道具は何でしょうか。
スマホ、ICレコーダー、タブレットなど色々ありますが、私は基本的には「使いやすければ何でもいい」と思っています。
その人にとって使いやすいものを使うのが一番です。
<スマホ>
中学生や高校生でスマホを持っているなら、自分のスマホを使うのがお勧めです。
使いやすいだけでなく、そこから先の話す練習につながるからです。
スマホで録音する練習をすれば、スマホで話す練習につなげていきやすいと思いませんか?
特に、録音したメッセージを機械から再生するのではなく、LINEなどを使って音声ファイルを送って聞かせる場合には最適な道具と言えます。
親のスマホでも基本的には同じですが、「使いやすさ」という点では少し劣りますね。
本人のしたいときに練習できる、というのが重要な要件になるケースもあります。
<学校のタブレット・ノートPC>
学校から支給されているタブレットやノートPCでも、もちろん構いません。
「音読を聞かせる」「発表の練習」など、担任の先生に協力してもらって、学習活動の一部として話す練習を行う場合にはお勧めです。
せっかく道具があるのに、「学校のタブレットではメッセージの送信ができない」「そもそも学校のタブレットを持ち帰れない」といった時代遅れのローカルルールが足かせになるケースもあります。
この場合は「合理的配慮」や「個別の指導計画」といった視点から例外的な対応を認めてもらうように話を進めることもできますが、私としては別に学校のタブレットである必要はないと思っていますので、学校がダメと言うならはいそうですか、と別の道具を使うことをお勧めします。
<ICレコーダー>
ICレコーダー(ボイスレコーダー)も性能のいいものが安く手に入るようになりましたので、練習用に1台購入するのもありです。
ICレコーダーを使った方がいいケースとして、録音を聞かせる際に音声データで送るのではなく、機械そのものを渡して聞いてもらう方法をとる場合があります。(例:家で録音して、翌日担任の先生に渡して別の部屋で聞いてもらう)
この場合はやはり専用のICレコーダーが1つあった方がいいでしょう。
ちなみにこれは学校のタブレットでもできますが、ICレコーダーの方が持ち運びがしやすいという長所があります。
持ち運ぶがしやすい方が継続しやすいですし、朝先生にこっそり渡すのもしやすいです(タブレットだと渡すときに目立ちます)。
<その他>
・おもちゃ
録音と再生ができるおもちゃ、たくさんあります。
音質や形状などは様々ですが、使いやすいものがあったらおもちゃでもいいですね。
「ボイスチェンジャー」機能がついているおもちゃもあって、これも場面によっては意外と活躍したりします。
・「ボイスメッセージが送れる子ども見守りGPS」
スマホと連動させて子どもの位置情報を把握する道具ですが、最近はボイスメッセージを送る機能がついているものがあるようです。
もしすでにこれを使っているご家庭では話す練習にも活用できますね。
「学校にもってきちゃダメ」と言われないのが長所かも?
・「親の使い古したスマホ」
新しいスマホに替えた際に、古い機械がそのまま残っていることがあります。
古い使わなくなったスマホでも、Wifiがつながれば電話以外のかなりの機能がそのまま使えます。実は高性能なお役立ちアイテムなのです。
・「VOCA」などのコミュニケーション・エイド
VOCAというのはコミュニケーションを支援するための機器の総称で、STや特別支援学校の先生などの専門職が使います。
昔はコミュニケーション支援と言えばVOCAは代表選手だったのですが、今はスマホやICレコーダーがあるので、わざわざ専用のVOCAを使う必要はほぼ0ですね。
ここまで、「録音を使った練習のメリット」と「お勧めの道具」について説明してきました。
後編では、録音から「会話」につなげる方法、そして忘れてはいけない注意点について説明します。
【注意点】
ここに書いてある方法は、効果のある場合もありますし、そうでない場合もあります。
書いてある方法を機械的に実践しても上手くいきません。
練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。
【WPC】緘黙症状改善のための3要素
これまで色々なところで場面緘黙への対応について書いたり話したりしてきました。
色々書いても、根幹にある考え方は変わらないので、私は基本的にいつも同じことを言っていることになります。
今回はこのブログのために、それを改めてまとめ直してみました。
これまでの臨床経験を通じて私が考えた緘黙症状改善のために必須な3要素、名づけて【WPC】です。
「緘黙症状改善のための3要素【WPC】」
【確信度】★★★★★以上
この3要素【WPC】がすべて揃えば、ほとんどの緘黙症状は改善させることができると考えています。
反対に言えば、緘黙症状の改善が上手くいかないとしたら、この3つの要素のいずれかが欠けているということでしょう。
上手くいっていないケースでは必ず、この3要素のどこれか1つ以上に問題があるはずです。
では3要素を詳しく見ていきましょう。
1.本人の意思(Will)
もし緘黙症状改善に必須の条件を1つだけ挙げるとしたら、それは何をおいても「本人の意思」です。
「話せるようになりたい」という思いが、緘黙症状改善のための最大の原動力になります。
緘黙症状改善の必須の条件であるということは、ここが緘黙症状改善のための最大の難関でもあるということです。
正直に言いうと、私がこれまで関わってきた数多くのケースの中には、上手くいかなかったものもあります。緘黙症状改善に至らずに、相談や関係が途切れてしまうというケースです。
そういったケースに共通するのは、「話せるようになりたい」という本人の意思を上手く引き出せなかったことでした。
本人の意思がなければ(=本人が話せるようになりたいと思っていなければ)、緘黙症状の改善はあり得ないと私は思っています。
ただし私は、本人が「話せようになりたい」と思っていないケースは、実際には稀だと考えています。
多くの場合、本人の意思がないのではなく、親や教師や臨床家がその意思を上手く引き出せていないのではないかと考えているのです。
これについては関連する内容をこちらにも書きました。
2.綿密な計画(Plan)
本人の意思と同じくらい重要なのが、「綿密な計画」です。
本人の「話せようになりたい」という意思があっても、しっかりした計画がなければ緘黙症状は改善しません。
本人が「話せようになりたい」と思っていて親や学校の協力もあって練習をしているのに改善していかない、というケースのほとんどはこれが原因でしょう。
「本人のやりたい練習ではない」、「目標と練習の内容があっていない」、「練習の難易度が適切でない(難しすぎる/優しすぎる)」、「練習内容が現実的でない(計画だけで実際には練習の機会が作れない)」などのパターンがあります。(関連する内容をこちらに書きました)
同じように、「カウンセリングに通っていても症状が改善しない」というのも、そこで考えられている計画そのものに問題があるケースは多いです。
同語反復のようでもありますが、「練習が上手くいかないのは、上手くいく練習の計画になっていないから」ということです。
では「綿密な計画」はどのようにすれば立てることができるでしょうか。
それにはかなり多岐にわたる説明が必要ですので、簡単に述べることができません。
この「いちりづか」のサイトの色々なところにも書いていますので、隅から隅まで読んでいただければ、かなり理解できるとは思います。
また拙著「臨床家のための場面緘黙改善プログラム」(学苑社、2021年)により体系的に書いておきましたので、詳しく学びたい方はご覧下さい。
ただこれについてはマニュアルというのはなく、最終的には一人一人ひとりにあった計画を考えていかなければならない性質のものです。本人や家族だけで難しいと思ったらためらわずに専門家の力を借りることをお勧めします。
3.関係者の連携(Cooperation)
必須の要素の3つ目が、関係者の連携です。
本人の意思があって、綿密な計画があっても、それが実行できるためには学校や職場などの関係者の連携と協力が不可欠です。
子どもの場面緘黙の場合、緘黙症状から生じる問題のほとんどは学校で起きていることです。
もちろん学校以外でも緘黙症状は生じますが、問題の質においても量においても、学校で困ることが圧倒的に多いです(習いごとなら困ったら行かなければ済みますが、学校はそうはいきません)。
ですので緘黙症状の改善は、学校で(大人の場合は職場など緘黙症状が起きているところで)行う必要があります。
学校での緘黙症状の改善(=学校で話せるようになること)を目指すとすれば、学校との連携は必須です。
誰と、いつ、どの時間に練習をするのか、担任の先生に何を協力してもらうのか、学校はどのように条件を整えればよいのか。
そういったことをしっかり相談して、実践していくことが求められます。
病院等の専門機関だけでは緘黙症状が改善しないケースがある理由も、ほとんどはこれだと思っています(関連する内容をこちらにも書きました)。
専門機関にかかっている場合も、必ず学校との連携について具体的に計画を立てるようにしましょう。
【注意点】
ここに書いてある方法は、効果のある場合もありますし、そうでない場合もあります。
書いてある方法を機械的に実践しても上手くいきません。
練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。
【アレンジは無限大で効果抜群】 「話す練習」でよく使う4つの型
500かどうかは分からないですが、話す練習の方法というのは実際無数にあります。
「人」×「場所」×「すること」の要素を組み合わせて話しやすい条件を作る、というのが基本的な考え方ですが、このかけ算の組み合わせだけで膨大な数になります。
その中でもよく使う(=採用されやすい)型がいくつかあるので、はじめにまとめてご紹介します。
名づけて「話す練習四天王」。絶望的にセンスのないネーミングですみません。
1.「放課後に教室で先生と話す」
「学校で話す」「先生と話す」につながりやすい、効果抜群の方法。
緘黙症状改善の練習方法として王道中の王道。「話す練習」界のベートーヴェン。
先生との物理的な距離を50cmずつ近づけたり、親やきょうだい、友だちなどを加えたり、「音読」の部分を「しりとり」や「サイコロトーク」にするなど、いくらでもアレンジができます。
たまに先生の協力が得られないことがありますが、そういうときのための「裏ワザ」があります。
他にも工夫のポイントが色々ありますが、それはまた追々。
2.「友だちと家で遊ぶ」
1.がベートーヴェンなら、こちらはモーツァルト。
学校では声が出せなくても、家なら話せる子はたくさんいます。
個人的にはもっとも好きな練習方法です。
「先生と話せるようなる」よりも「友だちと話せるようになる」の方が、モチベーションが高いと思いませんか?
塾や習いごとをしている子が多かったり、コロナで家で遊ぶ機会も少なくなってしまったなんていうケースもあり、ちょっと採用されづらいのが難点です。
Nintendo Switchなどでオンラインゲームを友だちとするのもお勧め。
3.「録音を聞かせる」
「話す」という行動を実行しやすい方法で、本人がやる気にさえなれば症状の改善につながります。
「家で話す」という負荷の低い方法から始められるので、練習の最初のステップとしても採用しやすいです。
このスタイルで一番よく使うのは「教科書の音読を先生に聞かせる」。
先生側から見ても短時間でできて学習成果の確認にもなるので一石二鳥です。
録音する内容の他、録音する時間や場所、再生する(聞いてもらう)方法などをアレンジしていくことで無理なくステップアップしていくことができます。
反対にこの方法でよく失敗するのは「本人が嫌がってできなかった」。
そりゃそうでしょう。無理やりやっても上手くはいきません。
録音から会話につなげる小技も色々ありますので、また別の機会にご紹介します!
4.「お店で注文する」
先生や友だちの協力がなくても、自主練で話す練習が進められる、通称「筋トレ」。
「初対面の人と話す」練習にもなるので、(進学など)新しい環境で話せる状態でスタートしたい!というときに最適です。
マック、ファミチキ(またはからあげクン)、コーヒーなど、練習メニューも無数にあるのが魅力です。
お店で注文できる、というのは生活が豊かになることに直結します。
スタバでキャラメルモカフラペチーノを注文したり、ラーメン二郎で野菜マシマシを頼んだりできるようになるかも?
おわりに
これらはいずれも基本形で、ここから「人」×「場所」×「すること」の要素を組み合わせて練習メニューをアレンジしていくことができます。
そうすると出てくる疑問がありますね。
「どれをやったらいいの?」
実はそれが難しいんです。
どれもピタッとはまれば効果は抜群ですが、無理やりやらせようと思ってもうまくいきません。
放課後に先生と話す練習をしたけど上手くいかなかった、という経験のある方もいると思います。
上手くいく方法を考えるために、「いちりづか」では初回の面談は90分くらいはかかります。
結局のところ、無数にある練習メニューの中から最適なものを選ぶ方法は1つしかないと思っています。
本人とよく相談することです。
【注意点】
ここに書いてある方法は、効果のある場合もありますし、そうでない場合もあります。
書いてある方法を機械的に実践しても上手くいきません。
練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。