【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法
【解説】録音を使った練習の進め方(後編)
前回は「録音を使った練習」の解説の前編をお送りしました。
今回はその続きで、
・録音から「会話」につなげる方法
・録音を使った練習の注意点
について説明します。
「録音を使った練習」
【使いやすさ】★★★★★
色々な条件
「話す練習」は「人」「場所」「活動(すること)」の条件を組み合わせて考えていくのが基本ですが、録音を使った練習でも同じです。
録音の場合、「録音する方法」「聞かせる方法」の2つの状況で構成されているため、それぞれについて条件を考えていくことになります。
組み合わせの数が増えるので、他の話す練習よりもスモールステップが作りやすい方法だと言えます。
1)録音する内容
他の練習でも同じですが、何を録音するのか(=活動(すること))の条件は話しやすさを大きく左右します。
「音読(教科書や新聞のコラムなど)」や「なぞなぞを出す」「しりとり」「質問への返答(事前にもらった質問に答える)」などの一般的な内容の他に、録音独特の方法もあります。
日記風に今日のできごとを語ったり、ビデオレターっぽく少し長めに話すのは、他の対面での練習ではしづらいので録音向きの練習です。
歌や英語のスピーチなど、「声を出すこと」が重要な学習活動を録音によって行うというケースも多いです。
2)録音する方法
練習の最初は、夕方や夜に自宅で録音するのが一般的です。
そこからステップアップして、「場所」や「時間」を変えていくことができます。
慣れてきたら学校の相談室や支援学級の教室での録音に挑戦することもできますし、中間の段階として通学路や校庭、駐車場や車の中での録音もできます。
時間についても、前日の夜録音するのと当日の朝録音するのでは時間的な距離が異なります。
学校で録音できるようになれば、録音してから聞かせるまでの時間を短くしていくことができます。
3)聞かせる方法
ICレコーダーで録音して聞いてもらう場合でも色々な条件があります。
・誰が聞くのか(担任だけか、特定の友だちか、クラス全員か、など)
・その場で聞くか(本人はいるかいないか)、別の場所で聞くか
・すぐに聞くか、時間を決めて聞くか
・スピーカーから音声を出して聞くか、イヤホンで聞くか
・何回聞くか(聞いたらすぐに消去するのか、など)
・どうやって音声データを渡すのか(誰がいつどのように) など
また練習の方法によっては「聞かせない」ということもあり得ます。
つまり「録音するだけして、聞かせないで音声データを消去する」という方法です。
これは「練習を聞かれるのは嫌」というケースで、練習の一番初めの段階で使うことがあります。
録音から「会話」につなげる方法
録音から会話につなげるには、「時間と場所を近づけていく」という考え方が効果的です。
上記の「2)録音する方法」で書いたように、学校での録音に近づけていけるとよいでしょう。
また内容についても、初めは音読からスタートして、慣れてきたら「質問に答える」に挑戦するのがお勧めです。
【ステップの例】※途中の段階をかなり省略しています
・家で教科書の音読を録音して、翌日担任の先生に聞かせる練習からスタート
↓
・慣れてきたら学校での録音に挑戦:誰もいない時間・場所に(放課後に相談室などで)音読を録音→翌日担任に聞かせる
↓
・学校での音読ができるようになったら時間と場所を近づける:担任から質問してもらってそれへの答えを相談室で録音→すぐに先生に聞かせる
ここまでできれば、リアルタイムでの応答まであと一歩!
家での音読から担任との会話まで、どのくらい時間がかかるかはケースバイケースです。
途中、かなり細かいステップをつくっていって、2年くらいかかってようやく先生からの質問に答えられるようになったケースもあります。
録音を使った練習の注意点
録音を使った練習を検討する際の注意点は1つだけ。
「本人とよく相談すること」です。
本人がこの方法でいけると思えば絶大な効果を発揮しますが、本人が嫌がったらこの方法を採用するべきではありません。
では、もし親や教師がこの方法で練習をしていってほしいと思っているのに、本人が拒否した場合は、どうしたらよいでしょうか。
それは簡単で、他の方法を考えればいいだけです。
この方法にこだわる必要はありません。
「話せるようになる」ための方法なんて500通りもあるわけですから。
録音を使った話す練習はとても効果のある方法です。
本人とよく相談しながら、効果的に練習を進めていけるといいですね。
録音を使った練習の小技や工夫などはまだまだありますので、また別の機会にご紹介します。
【注意点】
ここに書いてある方法は、効果のある場合もありますし、そうでない場合もあります。
書いてある方法を機械的に実践しても上手くいきません。
練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。