【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法
【学校との連携⑨】特別支援学校について①場面緘黙の子も特別支援学校に就学することはできる
ここまでは主に、地域の小中学校に通って特別支援学級や通級による指導を利用するケースについて考えてきましたが、ここから特別支援学校についても説明していきましょう。
場面緘黙の子の中には特別支援学校に通う子たちも少なくありません。
その一方で、「場面緘黙だけでは特別支援学校の対象にならない」のように言われたり、そういう話を聞いたことのある方もいるでしょう。
そこでまずは「場面緘黙と特別支援学校」に関わる制度について確認していきましょう。
はじめに結論を書いておきましょう。
場面緘黙の症状のある子も、条件を満たせば特別支援学校に就学することはできます。
「場面緘黙」自体は、特別支援学校の対象となる障害ではない
いきなり上記の結論と反対の見出しを書いてしまいました。
ただしこれらは矛盾している訳ではありません。
特別支援学校の対象となる障害は、以下の5種類です。
・視覚障害
・聴覚障害
・知的障害
・肢体不自由
・病弱
この中には、「情緒障害」(←場面緘黙はここに含まれる)は入っていません。
つまり情緒障害は、特別支援学級・通級による指導の対象ではあるが、特別支援学校の対象ではないということです。
冒頭に述べた、「場面緘黙だけでは特別支援学校の対象にならない」のように言われたというケースは、このことを指している訳です。
場面緘黙があっても特別支援学校の対象になるケース
では、場面緘黙があっても特別支援学校の対象になるのはどのようなケースでしょうか。
それは、場面緘黙の症状があり、さらに上記の5障害のいずれかにも該当するケースです。
障害が重複していれば論理的にはどれも当てはまりますが、実際に多いのは「知的障害」と「病弱」の2つです。
なお、「場面緘黙+自閉スペクトラム症」の場合は制度的には特別支援学校の対象にはなりませんが、症状が重く著しい適応行動の問題がある場合は認められることもあります。
特別支援学校の対象となるかの判断基準(障害の程度)
当該の児童生徒が特別支援学校の対象となるかの基準は、「学校教育法施行令」という法律で定められています。
学校教育法施行令 第二十二条の三 法第七十五条の政令で定める視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者の障害の程度は、次の表に掲げるとおりとする。
障害の程度
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視覚障害者
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両眼の視力がおおむね〇・三未満のもの又は視力以外の視機能障害が高度のもののうち、拡大鏡等の使用によつても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度のもの
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聴覚障害者
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両耳の聴力レベルがおおむね六〇デシベル以上のもののうち、補聴器等の使用によつても通常の話声を解することが不可能又は著しく困難な程度のもの
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知的障害者
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一 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの
二 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの |
肢体不自由者
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一 肢体不自由の状態が補装具の使用によつても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能又は困難な程度のもの
二 肢体不自由の状態が前号に掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの |
病弱者
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一 慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの
二 身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの |
このうち「知的障害者」や「病弱者」の基準に該当していれば、場面緘黙の症状のある子も特別支援学校の対象として認定されることになります。
冒頭で書いた「条件を満たせば特別支援学校に就学することはできます」というのは、この条件のことを指しています。
例えば知的障害者の基準に「二 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの」とありますが、分かりやすく言い直すと「それほど知的障害が重くなくても、社会生活への適応が著しく困難なら、特別支援学校の対象」ということです。
実際、場面緘黙の子たちの多くは学校で話せないし、買い物も一人ではできない訳ですから、症状の重いケースなら「社会生活への適応が著しく困難」な状態にあると言うことはできるでしょう。
少し難しい表現も出てきますが、重要なことでもありますので、次回の記事でもう少し詳しく解説することにしましょう。