場面かんもく相談室 いちりづか

【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法

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場面緘黙の症状は、適切な対応によって
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「場面緘黙を治す」「話せるようになる」ための
最も効果的な方法を、
一緒に考えてみませんか?
2024-03-14 16:00:00

【難問】 場面緘黙の症状のある双子は同じクラスにした方がよいか?

先日相談のあった方からの質問で、「場面緘黙の症状のある双子ですが、小学校に上がるときに同じクラスにしてもらった方がいいですか?」というものがありました。

これはとても難しい問題ですね。

この方には、90分ほど面談で詳しくお話を伺ったり一緒に考えたりした上で、どちらがよいかの私の考えをお話ししました。

 

今回はこの難問について、考えてみましょう。

 

 

なぜこの問題が難しいのか

 

難しい理由1:ケースによって正解が異なるから

「同じクラス」にした方がいい場合も「違うクラス」にした方がいい場合もあり、ケースによってどちらが正解になるかが異なります。

単純にパターン化したり、こういうケースはこうと決めつけることができません。

 

難しい理由2:答えを1つに絞らないといけないから

2つの選択肢の違いは決定的なものなので、両立させたり中間を選んだりすることができません。

予防的に他の選択肢を残しておくこともできません。

 

難しい理由3:その判断が長期間継続するから

この判断は長期間継続し、途中で変更することができません。

クラス替えが2年に1回の学校なら、この判断によって最低2年間の環境を固定することになります。

 

難しい理由4:誤った判断をしてしまった場合の負の影響が大きいから

結果的に明らかな「誤った判断」になってしまう可能性があります。

特に「違うクラスにする」という判断をした場合、もしそれが誤った判断だった(ことが後から分かった)場合の負の影響が非常に大きいです。

 

このような理由から、他の問題(例えば「話す練習」をどうやって行うか)よりも判断の重さが大きくなります。

 

 

この問題を考えるための背景:思いつくこと

 

・双子やきょうだいの場面緘黙の子は多い

きょうだいはもちろんですが、双子の場面緘黙の子のケースもこれまでに何組も出会ってきました。

場面緘黙そのものが遺伝するのではなく、背景にある性格や気質が似るからだと考えています(これについてはまたどこかで書きましょう)。

 

双子の場面緘黙というケースは多いとすれば、2クラス以上ある学校なら必ずこの問題に直面するはずです。

ですのでこの問題はしっかり考えておく価値があると思います。

 

・学校の先生は「違うクラス」を選ぶことが多い(のではないか)

これは明確なデータがある訳ではないですが、私の関わった子たちの経験では「違うクラス」になっているケースが多いのではと感じます。

その理由は、おそらく学校の先生は「人間関係を広げてほしい」「友だちを作ってほしい」「自立してほしい」「2人の世界になってしまうから」のように考えると思うからです。

このため多くのケースで「違うクラス」という判断がなされるのではないかと思うのですが、そうすると「本当にその判断を第一の選択肢としてよいのか」を考えておく必要はあるでしょう

 

・双子の場面緘黙は「閉じた世界」「二人だけの関係」になるか

どのくらいの頻度かは分かりませんが、なるケースは確実にあります。

「双子の間で話せているから困らない」というケースもあります。

これはやはり緘黙症状の改善という視点からは要注意です。

 

もちろん、他の子たちへと関係が広がっていくケースもありますので、必ず閉じた世界になるとは言えません。

また双子とは言え(一卵性であっても)性格も行動も違うので、どちらかが社交的でどちらかが内向的ということもあります。

 

 

・「違うクラス」のメリット・デメリット

メリット:

・人間関係が広がりやすい可能性がある(ただし、必ず広がるとは限らない)

デメリット:

・(状況によっては唯一の)話せる相手と違うクラスになってしまう(ただし、他にも話せる相手がいる/できる可能性はある)

・複数の先生が対応することになる(ただし、これは必ずしもマイナスのこととは限らない)

つまりこの判断をした場合、もし期待していたように他の子への人間関係が広がっていかなかったら、緘黙症状はより悪化してしまうリスクがあるということになります。

 

・「同じクラス」のメリット・デメリット

 メリット:

・話せる相手が確保できる(ただし、双子同士でも学校で話せるとは限らない)

・同じ先生が対応できる

デメリット:

・二人だけの関係から広がって行きづらい可能性がある(ただし、他に広がる可能性もある)

・対応する先生の負担が大きくなる

つまりこの判断をした場合、緘黙症状悪化というリスクは避けられる可能性があります。

その反面、緘黙症状が改善しないというリスクは大きくなります。

 

・「合理的配慮」は可能か

「違うクラス」や「同じクラス」を判断するにあたって、「合理的配慮」という視点を持ち出すこともできます。

もし障害の状態からみてどちらかの判断が明らかによさそうなら、合理的配慮を考えてみてもよいでしょう。

(「違うクラス」でも「同じクラス」でも余計なコストがかかったり他の子に影響したりする訳ではありませんので「過度な負担」にはならないでしょう)

「合理的配慮」を持ち出すまでもないと思う方もいるかもしれませんが、学校側の提案(おそらく「違うクラス」)と本人・家族側の要望が明らかに違っていて折り合えないことはあります。

こういう状況で、障害の状態から考えて本人・家族側の要望が妥当だと考えられる場合は、合理的配慮で解決することになるでしょう

 

・本人たちの意思

これは本人たちに聞いてみないと分かりませんが、「同じクラス」を希望することが多いような気がします(その方が安心感が高いですから)。

通常はクラス編成の際に本人の意思は考慮されませんので、ここは考慮しなくてよいかなと思いますが、上記の「合理的配慮」が絡んでくる場合は、本人たちの意思は重要になります。

 

 

どう考えるか

 

最終的には、上記の様々な要因やメリット・デメリットを考慮した上で、どちらの方がよいかを選ぶしかないでしょう

ご質問のあったケースで私がどうお答えしたかは書きませんが、私が考えた判断の基準は「どちらが緘黙症状の改善が見込めそうか」でした。

「症状が重くてまずは配慮を優先なら同じクラス」「離すことで緘黙症状の改善が見込めそうなら違うクラス」になるかなと考えました。

 

画一的に「違うクラス」にするのではなく、個々の状態に応じて慎重に考えることが大事だと思います。