【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法

2024-02-13 12:00:00

【連載:場面緘黙と不登校】第3回 場面緘黙と不登校の「関係」

場面緘黙と不登校の「関係」:どちらが原因でどちらが結果か?

  

では次に、場面緘黙と不登校の「関係」を考えていきましょう。

不登校になってしまう場面緘黙の子は多いことが分かりましたが、では「場面緘黙があるから不登校になる」のか、「不登校だから場面緘黙になる」のか

これについては客観的なデータはありませんが、私の臨床経験からはいくつか考えられることがあります。

 

まずどちらが原因でどちらが結果かについては、論理的に考えて以下の4つのパターンがあります。

1.AがBの原因(場面緘黙があるから不登校になる)

2.BがAの原因(不登校だから場面緘黙になる)

3.AとBに共通する原因Cがある(他の要因があり、場面緘黙にも不登校にもなっている)

4.AとBとに共通する原因はない(両者は関係がなく、たまたま場面緘黙にも不登校にもなっている)

 

論理的には4.もあり得ますし、そういったケースもなくはないでしょうが、あまり考える意味がないのでここからの考察では除外します。

ここからは1.~3.のケースについて考えていきましょう。

 

場面緘黙と不登校:原因と結果.png

 

と言ってもこれはあくまで話を整理するための単純化であって、実際に1.~3.のどれなのかを区別するのは難しいです。

なぜなら場面緘黙にしても不登校にしても、分かりやすい1つの原因があってそうなっている訳ではなく、様々な要因が相互に影響し合って現在の状態となっているからです。(この考え方は非常に重要で、今後も度々出てきます)

 

ただ敢えて言うとすれば、私の臨床的な感覚ですが「3.AとBに共通する原因Cがある」が最も多いと思います。

この場合の「共通する原因C」とは、「強い不安症状」「感覚過敏」「環境側の要因」など、両者に共通する要因が考えられます。詳細については、長くなるので別の記事で述べます。

 

次いで「1.AがBの原因(場面緘黙があるから不登校になる)」の傾向が強いケースに出会うこともあります。これは、わりとはっきりと「話せないから○○が嫌で学校に行きたくない」のように緘黙症状が不登校の原因になっているケースです。そしてこの場合は緘黙症状が原因な訳ですから、緘黙症状の改善から取り組むと上手くいくことが多いです。

一方「2.BがAの原因(不登校だから場面緘黙になる)」は比較的稀です。これは「不登校になっている子のほとんどは場面緘黙にはないっていない」ということからも明らかでしょう。

とは言え場面緘黙を中心とした臨床ではやはり出会うことがあります。「不登校になる前は緘黙症状やその傾向はまったくなかったが、学校に行けなくなってから外で話せなくなってしまった」といったケースです。ただしこの場合、何もないところから不登校を原因にして緘黙症状が生じたと考えるよりは、もともと緘黙症状を発現させる要因が潜在的に存在していて、それが不登校を契機に顕在化したくらいに捉える方がよいと思っています。

そして1.と2.のいずれの場合についても言えるのが、「共通する原因C」が全く存在しないということはおそらくない、ということです。どちらかの原因になり得る要素(不安症状や感覚過敏や環境側の要因など)があれば、それはほとんどの場合もう一方の原因にもなり得るからです。

 

では場面緘黙と不登校の背景にある「共通する原因C」とは一体何でしょうか。

それを考えるためには「場面緘黙になる要因」と「不登校になる要因」をそれぞれ検討していく必要があります。

 

なお、ここまで話を分かりやすくするために「原因」ということばを使ってきましたが、そもそも場面緘黙にも不登校にも単一の分かりやすい「原因」が存在している訳ではありません。

「場面緘黙の原因」「不登校の原因」というのは大きな誤解を招く表現なので、ここからは「原因」は使わずに「要因」で統一して使っていくことにします。