場面かんもく相談室 いちりづか

【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法

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2024-02-28 14:00:00

【学校との連携⑦】なぜ場面緘黙の子が「特別支援学級」「通級による指導」を利用できないケースが後を絶たないのか?

ここまで、このカテゴリーの記事では場面緘黙が「特別支援学級」「通級による指導」の対象となっていることをくり返し説明してきました。

改めてここでまとめておくと、以下のようになります。

・特別支援教育の対象として「情緒障害」という障害の分類があり、「情緒障害」は「特別支援学級」と「通級による指導」の対象である

・場面緘黙は「情緒障害」に含まれている

 

なお、それぞれの根拠としては文部科学省から2013年に発出された「障害のある児童生徒に対する早期からの一貫した支援について(通知)」が最も分かりやすいでしょう。

原典にあたりたい方はこちらをご覧下さい。

ここの「3 小学校,中学校又は中等教育学校の前期課程への就学」の中に(1)特別支援学級、(2)通級による指導、とあり、それぞれ「情緒障害」が明記されています。

なおこの通知の中では「選択性かん黙」と書かれていますが、これは「場面緘黙」と全く同じものを指します。

 

このように、場面緘黙が「特別支援学級」「通級による指導」の対象となっていることは誰が見ても明白なのですが、なぜかこれらが利用できないケースが後を絶ちません。

これにはいくつかのパターンが存在しますが、いずれにも共通するのは「担当者の理解不足」です。

担当者とは、「担任→コーディネーター→校内委員会(校長等の全校の教員)→教育委員会事務→教育支援委員会→教育委員会(就学先決定)」という流れの中のすべての人を指します。

この流れのどこかで理解不足があると、話が止まってしまうことがあります。

 

ではどんなパターンがあるかを列挙してみましょう。(本人が希望しないケースはここでは除外します)

 

 

場面緘黙が「特別支援学級」「通級による指導」を利用できないケース

 

<主に担当者の理解不足によるもの>

1.担当者が場面緘黙のことを理解しておらず、特別な対応が必要という認識がない

2.担当者が場面緘黙が特別支援教育の対象となっていることを知らない

3.知能検査等ができないため判定に必要な資料が揃わない、と言われる

4.知的能力には問題がないのに、知能検査の結果が低かったため場面緘黙ではなく「知的障害」と判定される

 

<主に環境側の因子によるもの>

5.地域の学校に情緒障害を対象にした特別支援学級・通級が設置されていない

6.特別支援学級・通級の定員がいっぱいで入れない、「他にも利用できない子がいるから」という理由で断られる

 

1.と2.についてはもう説明不要だと思いますので、3.以下について説明しましょう。

 

3.知能検査等ができないため判定に必要な資料が揃わない、と言われる

 

場面緘黙の症状があると、通常の方法で知能検査を行うのが難しいです。

それを理由に利用を断られるというケースが、実はよくあります。

 

これは明らかに担当者の制度に対する理解不足です。

制度を作った教育委員会側の理解不足なのか、手続きに至るまでの担任やコーディネーター側の理解不足なのか、上記の流れのどこかに問題があることが明らかです。

そもそも情緒障害の判定にあたっては知能検査の結果は必須ではありません

知能検査ができないために判定できないなら、発達検査の実施できない重症心身障害の子や、通常の方法で知能検査ができない視覚障害の子も特別支援学校を利用できないことになりますが、そんなおかしい話はありません。

 

さて、ではこのようなケースでどう対応したらよいでしょうか。

正攻法で「知能検査は必要ない」ということを理解してもらう方法と、「知能検査の結果を用意してしまう」という方法があります。

前者の場合、「知能検査が必要」と言っているのが誰かによって働きかける先が変わってきます。

もし担任やコーディネーターのレベルでそう言っているだけなら、市町村の教育委員会の窓口に相談してみるとよいでしょう。

市町村の教育委員会のローカル・ルールの問題なら、都道府県の教育委員会に問い合わせてみることをお勧めします。

 

後者の場合、「とにかく知能検査の結果があればいいんでしょ」という考え方で、検査をしてもらえるところを探すこともできます。

裏ワザとしては、DAM グッドイナフ人物画知能検査のような発話を要しない簡易な知能検査を使う方法もあります。

 

 

4.知的能力には問題がないのに、知能検査の結果が低かったため場面緘黙ではなく「知的障害」と判定される

 

このケースもたまに見かけます。

知的障害ではないのに検査結果によって知的障害の特別支援学級に入れられてしまい、そこで小学校時代を過ごしたという子も何人か知っています。

これはまったくひどい話です。

 

これは明らかに誤判定なので、こういう場合はすぐに第三者の意見を求め、対応した方がよいでしょう

 

3.や4.のようなことが生じてしまうことの背景には、「専門職の知能検査に対する理解不足」と「安易な知能検査信仰」があると私は考えています。

知能検査は知能が分かる万能の道具ではなく、むしろ欠陥だらけの物差しです。

 

知能検査に関連してもう一つ、「とりあえずWISC」も場面緘黙あるあるです。

相談を受けた機関の担当者が「どう対応したらよいか分からないので、とりあえずWISCを勧めてみる」ということがよく起きます。

緘黙症状が強い子に知能検査をしても、あまり意味のある結果は得られないと私は思っています。

 

 

 

5.地域の学校に情緒障害を対象にした特別支援学級・通級が設置されていない

6.特別支援学級・通級の定員がいっぱいで入れない、「他にも利用できない子がいるから」という理由で断られる

 

 

実際、日本中の学校全てに十分な数の特別支援学級・通級が設置されているわけではないので、どちらもかなり起こるケースです。

大事な点は、「地域の学校に情緒障害を対象にした特別支援学級・通級が設置されていなくても、判定はできる」「待っている子が多くても、判定はできる」ということです。

教育支援委員会・市町村教育委員会で判定するのは、「その子の状態」が情緒障害の状態に該当するか、特別支援学級・通級の利用が適当かです。

環境側の因子によってこの判断が左右されることは、本来はありません。

 

 

では、地域の学校に通級が設置されていないのに、通級による指導が適当、という判定をされたらどうなるでしょうか。

そこから先は色々です。

「情緒障害」ではない通級(「言語障害」や「自閉症」「LD」等)で対応してくれるケースは多いです。

通級には通えないけど、通常の学級で最大限できる支援や配慮はします、となるかもしれません。

行政が設置の必要性を認めて通級を設置する方向で動いてくれることもあるかもしれません(数年はかかるでしょうが)。

 

こうすることの最大のメリットは、「個別の指導計画」作成や「自立活動」など、特別支援学級や通級で受けられる対応が可能となること(=プレミアムコース)です。

ですので実際に通えなくても、この判定には大きな意味があるのです。

 

また、特別支援学級・通級の定員がいっぱいで入れないというのは、担当者を増やせばいいだけの話なので、それができていないのは単なる行政の怠慢でしょう。

こういった場合は行政に働きかけていくのもよいかもしれません。

 

 

【注意点】

この記事の内容は、日本の一般的な学校教育を念頭に書いています。

日本の学校でも、私立の学校などの場合は当てはまらないことがあります。