【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法

2024-03-11 09:00:00

【学校との連携⑩】特別支援学校について②就学の基準となる条件

前回の記事では、特別支援学校の対象となるかの基準は「学校教育法施行令」で定められており、この基準に該当していれば、場面緘黙の子も特別支援学校の対象となると説明しました。

今回はこの基準について詳しく解説していきましょう。重要な表なので再掲します。

 

学校教育法施行令 第二十二条の三 法第七十五条の政令で定める視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者の障害の程度は、次の表に掲げるとおりとする。

障害の程度
視覚障害者
両眼の視力がおおむね〇・三未満のもの又は視力以外の視機能障害が高度のもののうち、拡大鏡等の使用によつても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度のもの
聴覚障害者
両耳の聴力レベルがおおむね六〇デシベル以上のもののうち、補聴器等の使用によつても通常の話声を解することが不可能又は著しく困難な程度のもの
知的障害者
一 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの
二 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの
肢体不自由者
一 肢体不自由の状態が補装具の使用によつても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能又は困難な程度のもの
二 肢体不自由の状態が前号に掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの
病弱者
一 慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの
二 身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの

 

 

「知的障害者」に該当する場合

 

一 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの

「知的発達の遅滞があり」とありますが、知的能力の水準は知能検査の結果を参照します。

概ね「IQ70~75以下」が基準になっています。

 

ただしIQの数値だけが判断基準なのではありません

後半は「~、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの」と書かれています。

このように、適応行動の問題も考慮して判断をすることとされています。

 

場面緘黙の症状が重い子の場合は、後半部分はかなり該当することが多いでしょう。

ですので「IQが概ね70以下で、コミュニケーションが困難であり、日常生活で頻繁に援助が必要」であれば、特別支援学校の対象になると言えます。

 

二 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの

2つ目の基準は、「知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもの」についてです。

「前号に掲げる程度」というのは「知的発達の遅滞」のことですので、「達しない」ですから「IQ70よりも高い」という意味になります。

と言ってもいくら高くてもよい訳ではなく、これは「境界知能(ボーダー)」と呼ばれる範囲(概ねIQ70~85以下)を指すと解釈するのが妥当だと思います

 

「IQ85以下」というのは、厳密に言うと説明が難しいのですが、大まかに言って「100人中下から15番目以下」または「生活年齢よりも15%くらい精神年齢が低い」という感じで捉えればよいでしょう。

例えば「小学3年生の子が小学2年生の算数の内容で苦戦している」くらいです。

このくらいの知的能力の範囲に当てはまる子は、障害の有無に関わらずクラスの中にある程度います(1割ちょっとくらい)。

 

そういった知的能力の子で、さらに「社会生活への適応が著しく困難なもの」だと、この基準に当てはまる訳です。

「社会生活への適応が著しく困難なもの」というのは、かなり解釈の幅がある表現です。

この場合は、緘黙症状だけでなく行動の抑制もあり、学校では食事や排泄などの行動も困難な状態、のように理解しておくのがよいと思います。

 

以上のことをまとめると、「IQが概ね70~85程度で、緘黙症状だけでなく行動の抑制もあり、学校では食事や排泄などの行動も困難のように解釈するとよいでしょう。

ただしこれはあくまで基準に該当するかどうかの議論であって、「知的障害」のある子として特別支援学校に就学するのをお勧めするかどうかは別の話です。

どのような場合に特別支援学校を選択したらよいかは、また別の記事で解説します。

 

 

「病弱者」に該当する場合

 

「病弱者」の基準も2つありますが、2つ目は「身体虚弱の状態」で場面緘黙とは異なりますので、1つ目の基準だけを解説しましょう。

 

一 慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの

前半に列挙されている疾患名は場面緘黙には関係がないので無視して結構です。

「その他の疾患」とありますので、場面緘黙やその他の不安症などの関連する疾患がここに該当すると考えることができます。

また「医療又は生活規制を必要とする」とありますが、心理療法も医療の一部ですので定義の上ではこれも該当すると考えることはできます。

従って、「場面緘黙等の疾患があり、継続して心理療法を行う必要がある」という状態なら、条件を満たすと言うことはできるでしょう。

 

とは言え、場面緘黙の症状が「病弱」の代表例という訳ではもちろんありません。

あくまで「もし必要があれば、(少し無理やりでも)「病弱者」の定義に当てはめることはできるので、特別支援学校への就学は可能」ということです。

なぜこのような話をするかというと、実際に「病弱」の特別支援学校に場面緘黙の症状のある子が就学するケースはそれなりにあり、現実的な選択肢の一つになり得るからです。

 

ただしこれに関しては、個々の学校ごとの事情に大きく左右されます。

近年では「病弱」の特別支援学校に、呼吸器疾患や腎臓疾患といった身体の問題だけでなく、精神・心理的な問題によって通常の学校生活を送るのが困難な状態になっている子が在籍するケースは少なくありません。

ですがそういった子を病弱の特別支援学校で広く受け容れているかどうかは、地域(都道府県)によってかなり違いがあるようです。

ですので病弱の特別支援学校が選択肢になるかどうかは、お住まいの地域の状況によって判断する必要があります。

 

 

どのような場合に特別支援学校を選択したらよいか

 

ここまで、場面緘黙の症状のある子が特別支援学校に就学する場合の基準となる条件について解説してきました。

先ほどから述べていますが、これらはあくまで「条件を満たすことができる(=選択肢になり得る)」という意味であって、「特別支援学校に通うのが適応かどうか」はまた別の話です。

ではどのような場合に特別支援学校を選択したらよいかについて、次回の記事で検討することにしましょう。