【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法
【連載:場面緘黙と不登校】第5回 対応方法の基本①とにかくよく理解すること
前回までの記事はこちらをご覧下さい。
では今回から、緘黙症状があり不登校状態になっている子への対応について、考えていきましょう。
「原因探しはダメ」?
不登校についてインターネットで情報を探していると、「原因探しはダメ」という考え方に出会うことがあります。
これは私の考え方とは大きく違っているので、はじめに考えておきましょう。
私は不登校への対応にあたっては、「なぜ学校に行けないのか」「学校に行けないことの背景にはどのような要因があるのか」を正しく理解することが不可欠だと考えています。
なぜなら「不登校」というのは、そういう病気や障害があるわけではなく、あくまで表面に見えている「状態」に過ぎないからです。
色々な背景や困りごとを抱えている子たちがいて、それぞれ別の理由で学校に行けない・行きたくない状態になっています。
それを、背景にある問題を一旦無視して「年間30日以上の欠席」という数値的な基準でひとくくりにしたのが「不登校」という概念です。
これを別の現象に置き換えて考えてみましょう。
例えば「腹痛」という概念があります。お腹が痛いことですね。
腹痛にも色々な理由があります。何かの病気だったり、食べ過ぎだったり、ストレスだったりします。
当然、腹痛のときはその原因を明らかにします。(腹痛の場合は単一の要因であることが多いと思うので、ここでは「原因」でよいと思います)
病気の腹痛と、食べ過ぎの腹痛だったら、対応の仕方が全然違いますね。
もう一つ別の例で考えてみましょう。
「車が動かない」という状態になることがあります。
これも色々な理由がありますね。バッテリーがあがっているとか、ガソリンがないとか、どこか故障しているとか。
車が動かないときにはすぐにJAFを呼ぶという「共通の対応」もありますが、きてくれたJAFの人は原因を探してくれますね。(車の場合も「原因」と言ってよいでしょう)
バッテリーがあがっていることが分かれば、その場で充電してくれて、車はすぐに走り出せます。
「不登校」も同じだと私は考えています。
「なぜ学校に行けないのか」「学校に行けないことの背景にはどのような要因があるのか」を正しく理解することが、適切な対応につながります。
このように、問題となっている行動や現象の背景にある要因を正しく理解し、それに基づいて対応の方法を考えることを専門的には「アセスメント」と呼びます。
ここまでの簡潔にまとめると、「適切な対応をするためにはアセスメントが不可欠」ということです。
何についての情報が必要か
「アセスメントが不可欠」については理解していただけたと思います。
では、何についての情報が必要なのでしょうか。
これについては、必要な情報はたくさんありすぎて、詳しく書くのはなかなか難しいです。
無理を承知で単純化するとしたら、次の3つと言えるでしょうか。
・本人の心身の状態
・環境側の要因
・本人の意思
大まかにいって、前回の記事で紹介した「背景にある要因」と捉えてもらえればイメージしやすいと思います。
こういった事柄を1つ1つ丁寧に見ていくことが大切です。
そしてその中でも、私が最も重視しているのが「本人の意思」です。
学校に行けないのはなぜか、学校に行きたい気持ちはあるのか、本人は今の状態についてどのように思っているのか、といったことを丁寧に確認していきます。
本人が言語化できない場合
本人の意思が大事ということは分かっていても、本人がそれを上手に言語化できない場合もあります。
次回は、そういうときの考え方と対応について検討していきましょう。