【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法
【連載:場面緘黙と不登校】第10回 「いい休み方」について②「いい休み方」は緘黙症状の改善にも効く
前回の記事では、学校に行きづらい子への対応として、「いい休み方」をすることがとても大切だと指摘しました。
今回は「いい休み方をすることは、緘黙症状の改善にもつながる」ということを説明しましょう。
「場面緘黙+不登校」が難しいのは、社会とのつながりが断たれるから
緘黙症状があって学校に行きづらい状態になっている子への対応が難しいのは、「コミュニケーションの障害」と「関わる場の減少」が同時に起こるからです。
これは「社会とのつながりが断たれる」と捉えることもできるでしょう。
場面緘黙と不登校が同時に生じている場合、ほとんどのケースで強い不安症状や対人恐怖があることが想定されます(これについては第4回の記事で説明しました)。
このため、単に「人前で話せない」「学校に行けない」だけでなく、外出や他の集団への参加などの学校以外の社会とのつながりも作りづらくなってしまうのです。
緘黙症状があって学校に行きづらい状態になっている子への対応の第一歩は、まさに「社会とのつながり」を作り出すことだと言えます。
それが「学校とのつながり」の場合なら登校を増やすことを目指すかもしれませんし、「コミュニケーション」なら緘黙症状の改善を目指すことになるかもしれません。
「社会とのつながり」とは、どんな「社会」のことか
このような状態の子に「社会とのつながり」を作っていくためには、「どんな社会とつながるか」が重要です。
結論を言ってしまえば、上手くいくならどんな社会でも構いません。
もちろん、自治体の教育支援センター(適応指導教室)や親が勧めるフリースクールで上手くいく場合は、それで進めていくのでよいでしょう。
ですがこの記事を見ている方には、それでは上手くいかないケースもあると思います。
その時に大事になってくるのが「本人がやりたいこと」を通じて社会と関わっていくという考え方です。
入り口は何でも構いません。
本人がやりたいことを、まずはじっくりやっていけばよいのです。
どんなことでも、いつかは社会につながっていく
どんなことであっても、それを突き詰めていけば社会とつながっていきます。
例えば、場面緘黙の子で多い「イラストが得意」「イラストが好き」で考えてみましょう。
イラストやマンガは、描き手と作品との間で完結するものではありません。
はじめは「描いたものを人に見せるのは嫌」という子も多いですが、描き続けていれば必ず誰かに見せたくなります。
なぜならイラストやマンガは「人に見られることによって成り立つ」からです。
これは音楽でも小説でもお菓子作りでもそうです。
ではもっと一人の中で完結しそうな趣味はどうでしょう。
読書や動画視聴は一人で行うのが普通で、いくら続けていても人との関わりにはなりにくいかもしれません。
ですが世界を広げる絶好の教材になります。
海外のドラマを観ていれば日本の社会とは違う多くのことに気付くでしょう。
YouTubeだったら全世界に開かれた情報の窓になると思います。
(大事なのは、暇つぶしではなく、そういう見方ができるかどうかです)
どんなことでも一人で突き詰めることはできないので、インターネットで情報を検索したり、道具や材料を買いに行ったり、何らかの社会とのつながりが出てきます。
買いたい物があれば、それは緘黙症状改善のための機会になるでしょう。
気持ちが外側に向かっていくために、「いい休み方」を
私がこれまで多くの緘黙症状のある方と関わってきて、最も難しいと感じるのは「社会とのつながり」を求めていない場合です。
不登校だけなら何とかなりますが、本人が「人と話したくない」「誰とも関わりたくない」と強く考えている場合は、ほとんど何もできなくなってしまいます。
そんな場合でも、どこかに「社会とのつながり」を見出すことができれば、緘黙症状改善のとっかかりになります。
どんなことでもよいので、気持ちが外側に向いて生きたときに、緘黙症状の改善が始まると考えています。
そのためには、まずはしっかり休んで心と体の元気を補充しながら、好きなことを通して社会とつながっていくことが大事なのです。