【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法
【連載:場面緘黙と不登校】第6回 対応方法の基本②本人が言語化できない場合
前回は緘黙症状があり不登校状態になっている子への対応として、まずは「アセスメント」が大切、という話をしました。
特に本人の意思がもっとも重要です。
では、本人が自分の意思や自分の状態を上手に言語化できない場合はどうしたらよいでしょうか。
言語化できないというのも、様々な状態があります。
「自分でもよく分からないため答えられない」
本人も困っていたり何とかしたいと思っていたりしても、その困っている感じやどうしたいか自体がよく分かっていないケースがあります。
学校に行けないのはなぜかと聞かれても、その理由が自分でもよく分かっていません。
こういうケースでは、本人と一緒に少しずつそれを探究していくことが大切です。
学校に行けないことの背景に様々な要因があることを第4回の記事でお話ししましたが、本人がこのように整理して理解できているわけではありません。
例えば「感覚の過敏」というのは最近はよく知られるようになってきた概念ですが、本人自身が過敏に対してどのくらい自己理解があるか分かりません。
それが感覚の過敏であることに気付かず、「よく分からないけど何となく嫌な感じ」を抱いている可能性もあります。
大人になってから「あれは感覚の過敏だったのか」と気付くケースも少なくないでしょう。
ですので本人と一緒にこういったことを学びながら、理解を深めていくことをお勧めします。
背景にある要因だけでなく、「どうしたいか」「どんな支援や配慮が必要か」も、本人がどんな選択肢があるかを知っていなければ答えられません。
旅行先で「どこに行きたい?」と聞かれても、地図や観光案内がなければ希望が言えないのと同じです。
本人は「学校に行く」「学校を休む」の2つしか選択肢を知らないかもしれません。
でも「夕方だけ行く」「週に2日だけ行く」「別室で勉強する」「特別支援学級を利用する」「教育支援センター(中間教室)を利用する」「フリースクールに行く」「オンラインのフリースクールに参加する」「自宅でオンラインで勉強する」など様々な選択肢があります。
よい判断をするには、色々な選択肢があるんだということを本人によく知ってもらうことが大切です。
緘黙症状についても同じで、計画を立てて練習すれば話せるようになる、ということをよく理解してもらうことをお勧めします。
関連する内容をこちらにも書きました。
「その話題を明確に拒否する」
もし本人がその話題を明確に拒否する(「その話はしたくない」などと言う)場合は、「なぜ拒否するのか」をよく理解することが必要です。
「明確な拒否」というのは積極的な行動ですので、何かの意図や理由がある可能性が考えられます。
本人がその話題を拒否する理由が、「それまでの大人側の対応(例えば無理やり学校に行かせようとする、など)」にあるとしたら、その対応を改める必要があるかもしれません。
「学校に行かせようとしているのではなく、これからどうしていくかを一緒に考えたい」という姿勢で、本人と対話できる関係を時間をかけて築いていくとよいでしょう。
拒否する理由が「自分自身のことと向き合いたくないから」だとしたら、ひとまずはその問題には深入りせずに、当面の対応だけを考えていくこともできます。
根本的な解決にはならなくても、例えば「中学校の間は自宅で勉強しながら週に2日は教育支援センターに通う」のように決められれば、それはよい対応だと言えるでしょう。
本人にとっては触れられたくない話題であっても、何の解決策も考えずにただ「何もしない」状態でこれからもずっと過ごしていくことはお勧めできませんので、何かしらの対応は相談した方がよいと思います。
「本人とコミュニケーションがとれない」
もっとも難しいのがこのケースです。
こういう場合の対応は個々の事例でまったく異なりますので、このブログで説明できる範囲を超えています。
この場合は迷わず身近な専門家に相談することをお勧めします。