【ブログ】「話せるようになる」ための500の方法
【3月にすること①】「4月に向けた準備」が大切
場面緘黙の症状は3月から4月で大きく変わることがある
場面緘黙の症状は、他の障害や疾患よりも環境因子の影響を受けやすいです。
「自閉スペクトラム症」や「吃音」「構音障害」などの言語やコミュニケーションの障害は、相手によって症状が変わることはあまりありません。
一方、場面緘黙の症状は、進学や進級などのある3月と4月では劇的に変化することもあります。
なぜ場面緘黙が環境の影響を受けやすいかと言うと、場面緘黙は「話せる相手」と「話せない相手」が明確に異なるからです。
本人自身が全く変わらなくても、環境が変わるだけで症状が変わります。
3月まで徐々に改善しつつあった緘黙症状が、クラスや担任が替わることで振り出しに戻ってしまうこともあります。
反対に、環境が変わって周りが「話せる相手」ばかりになれば、緘黙症状はなくなります。
新しい相手は「話しやすい」か?「話しづらい」か?
場面緘黙の人にとって、「新しい相手」というのは話しやすいでしょうか?それとも話しづらいでしょうか?
これは人によって違います。
「知らない人の方が話しやすい」という人もいるし、「慣れている人の方が話しやすい」という人もいます。
そして同じ人の中でも、この2つが両方とも存在することもあります。
・仲の良い友だちは話せるが、他の子とは話せない。みんなと違う中学校に行ったら話せるかもしれない。
・学校の先生とは話せないが、知らないお店の人には声が出せる。いつもいく美容院の人とは会話ができる。
単純に「新しい相手なら話しやすい」という訳でもありません。
ですので、進学や進級などで新しい環境になることが、話しやすくなる方に作用することもありますし、反対に話しづらくなる方に作用することもあります。
こういった特性をよく理解した上で、新しい環境を迎えるためにどうしたらよいかを考えるのが、3月にしておくべき重要なテーマです。
従って、3月にするべきことは、「環境が大きく変わる4月に向けて準備をしておくこと」です。
残り少ない3月にどんな練習をするかを焦って考えるよりも、新しい環境でいいスタートができるようにしっかり準備することが大切です。
3月にすること:「4月に向けた準備」
【お勧め度】★★★★★
変化はよい方にも、悪い方にも起こる
3月から4月にかけて症状の変化が大きいと書きましたが、この変化はよい方にも悪い方にも起きます。
自分のことを知らない人と話せるようになるチャンスであるのはもちろんですが、新しい環境に対しては不安も大きくなるでしょう。
また先生やクラスメイト、あるいは職場の同僚などとの関係が0からスタートすることもあり、これまで築いてきたよい部分もリセットされてしまうかもしれません。
なるべくマイナス面の影響を減らしながら、プラスを大きくしていくという二正面作戦で挑むことになります。
「4月に向けた準備」とは何をすれば
では、環境が大きく変わる4月に向けた準備とは、何をすればよいでしょうか。
以下の4つにまとめてみました。
・新しい環境でどうなりたいかのイメージづくり
・不安を減らすための相談や見学、情報収集
・心と体の元気を蓄えること
・お店などで知らない人と話す練習
詳しくは次回以降の記事で見ていきましょう。
【注意点】
ここに書いてある方法は、効果のある場合もありますし、そうでない場合もあります。
書いてある方法を機械的に実践しても上手くいきません。
練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。
【「感動」よりも大切】3学期にしなくてもいいことは?
今までは学校で話せなかったけど、「卒業式(卒園式)では声を出してほしい!」
親や教師がこんなふうに考えることがよくあります。
場面緘黙あるあると言ってもいいくらいです。
確かにこれまで学校で話せなかった子が、学校生活の最後に声を出せたら感動しますね。
でもこれは、映画ではなく現実の世界です。
「感動」や「思い出づくり」を目指して練習するのではなく、「緘黙症状の改善」を目指した計画を立てることが大切です。
「卒業式で声を出して、先生や親を感動させる」
【感動度】★★★★★
【優先度】★☆☆☆☆
もちろん、本人がそれを目標にしているなら、しっかり計画してできるようになることを目指しましょう。
(その場合は優先度★5になります)
また、卒業式で声を出せたことが自信になったり、中学校で話せることにつながるかもしれません。
でも、親や教師の自己満足のために設定した目標だったら、がんばらなくてもいいと思います。
大事なことは、それが「緘黙症状改善」のための計画になっているかです。
優先度を考えれば、「卒業式で声が出せること」よりも、「新年度に新しい環境で声が出せること」の方がはるかに重要です。
卒業式で声が出せても、中学校でまた話せなくなってしまうようなら意味がありません。
ですので「どうしたら中学校で話せるようになるか」を考えて計画を立てることをお勧めします。
「どうしたら新しい環境で話せるようになるか」についての計画を立てる
【優先度】★★★★★
【注意点】
ここに書いてある方法は、効果のある場合もありますし、そうでない場合もあります。
書いてある方法を機械的に実践しても上手くいきません。
練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。
【優先度★★★★★】3学期にしておくこと、第1位は?
相談で話す内容にも、季節によって違いがあります。
4、5月だったら今年度の計画、6、7月なら夏休みに向けて、9月になったら2学期の計画、年末は冬休みの過ごし方・・・それぞれの時期で考えるポイントや計画の立て方が違ってきます。
365日とまではいきませんが、二十四節気七十二候くらいならいけそうな気もします。
今は立春を過ぎ、ウグイスの鳴く頃。ウグイスは別名「春告鳥」。
短い3学期のすでに折り返し地点にきました。
この時期の相談で必ず話しているのは、「来年度に向けた準備をしっかり行いましょう」。
残り少ない3学期に焦って練習をするよりも、こちらの方がはるかに重要です。
「環境の変化」は緘黙症状改善のための重要な要素。
特に進学やクラス替えは最大級のチャンスです。
今までのクラスでは「話せない子」になってしまっていても、先生やクラスメイトが変わるこの機会に「話せる子」で再スタートすることができるかもしれません。
そのためにもしっかり計画を立てて、準備をして新しい環境でのスタートを迎えましょう。
では「来年度に向けた準備」とはいったい何をしておけばよいでしょうか。
「新しい学校や教室の見学」「初対面の人と話す練習」「自己紹介の練習」など色々ありますが、最も大切なのは「春休み中に新しい担任の先生と相談する機会を作る」こと。
4月になってすぐ、まだ新学期は始まらない4月2日か3日くらいに相談の機会を設けてもらうように、学校に依頼をしておくことがポイントです。
「春休み中に新しい担任の先生と相談する機会を作る」
【優先度】★★★★★
相談する機会を作ったら、どんなことを話しておけばよいでしょうか。
大きく分けて次の2つがあります。
1.「新年度の学校生活で必要な配慮や準備の打ち合わせ」
・これまでの本人の状態や対応などについての説明
・新学期が始まって1、2週間くらいの詳細なスケジュールの確認
・自己紹介の方法やタイミングの確認
・音読や日直など声を出すことが必要な場面での対応
・「話す練習」をどのように行っていくかの確認
こういったことを詳しく打ち合わせしておくことで、新学期を安心感をもってスタートさせることができます。
2.「担任の先生と話せるようになるためのきっかけづくりや練習」
これは本人に挑戦の意欲があれば、このタイミングで行っておくと効果的です。
初対面の担任の先生に声を出すことができれば、ここからの話す練習などが格段に進めやすくなります。
新学期の学校生活が始まってからではなく、春休み中(新学期が始まる前)に行う方が効果的、ということがお分かりいただけると思います。
4月になってすぐに相談の機会を設けてもらうのですから、3学期のうちに学校に依頼しておく必要がある訳です。
ところで・・・
学校によっては「新学期になるまで担任を教えることはできません」という返事が返ってくることもあります。
私の経験では、全体の2、3割くらいでそういうことがあります。
「新学期になるまで担任を教えられない」というのはどこにも根拠がないただの「ローカルルール」なのですが、なぜかそういう悪弊を大事にしてしまうのが学校というところだと思います。
もちろんこういう場合にも対応方法があるのですが・・・、それについてはまた別の機会にご説明しましょう。
【注意点】
ここに書いてある方法は、効果のある場合もありますし、そうでない場合もあります。
書いてある方法を機械的に実践しても上手くいきません。
練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。